アッセンブル!呪術アベンジャーズ! 破墓(2024) 感想

破墓 映画

-何かが出てきた-

というわけで破墓パミョを見ましたよと。

簡単に説明すると「暴いちゃいけない墓を暴いたらとんでもないことになっちまったぜ!」という内容の韓国ホラー

いやー面白かったねこれは…
それに楽しかった

巫堂、葬儀師、風水師といった日本のフィクションではちょっと珍しめの人たちがとんでもなくやばい状況を解決すべく結束し奮闘するというある意味での呪術アベンジャーズ的作品

韓国ホラーということで邦画ではなかなかお目にかかる機会のない韓国の呪術的描写や儀式風景、お墓や祖先に対する考え方、向き合い方などたくさんの新鮮なものを味わえて視覚的満足度が非常に高かった

ただ個人差はあるんだろうけどホラーではあるしもちろんそういう怖がらせようという気概を感じる場面は多々あったものの僕としてはハラハラドキドキよりもワクワクの方が勝ってしまったので「とんでもなく陰惨で怖い体験がしたい!!」とアジアンホラーに手を出した人は物足りないかもしれない

しかし4人のメインキャラクターのそれぞれ立場によって変わる目的や流儀、信念が感じられる個性たっぷりの濃い掛け合いと描写、まるで馴染みのない異文化呪術的描写、そして呪術バトル的側面などホラー感がそこまで濃くなくても個人的には十分すぎるくらいの加点要素山盛りの映画だった

どんどん加速していく異常事態の連続に対してそれぞれの知識を元に答えを手繰り寄せながら事件の真相へと向かっていく章仕立ての構成をしながらその中で職業・キャラクターの特色の掘り下げが念入りに行われるのでそれぞれの職業への興味を持たせたり解像度をあげたりさらには一人一人に愛着がちゃんと湧くように丁寧に描写されていたことも好印象

ぱっと見「こいつひでえ死に方しそう」と思ってしまいそうなくたびれたおっさん達が最初は大金のために働くスタンスだったのにどんどんそれだけでは説明がつかないくらいの使命感を帯びた言動を取ったりとか巫堂のファリムとその弟子のボンギルの二人の作中描写からだけでは読み解ききれないほどに深い情に満ちた想像力を掻き立てられる関係描写などキャラクター一人一人の描写が本当に最高でみんな好きになってしまいましたよ。ええ。

サンドクとヨングン
破墓は守銭奴みたいな言動をしているくたびれたおっさんが見ていくうちにどんどんプロフェッショナルとして、そして人としてカッコよく見えてくるという素晴らしいおっさん体験ができる映画です。

その素晴らしいキャラ描写に加え、霊魂や鬼といった怪異・超常の類とそれを解決する人間達がさも当然のように実在していて害獣事件のニュースの影では彼らがとんでもオカルトバトルをしているというリアルとファンタジーの境界が溶け合っている世界観に呪術廻戦を初めとした異能バトル少年漫画味も感じて勝手に「ああ〜馴染む〜」と浸ったり

特にラストバトル周辺のめちゃくちゃやってるようで世界観の中にあるルールやロジックに則って対抗策を見出していこうというとする動きはバトル漫画感あって個人的に楽しすぎた

あとは『来る』を思い出したかな。
電話のシーンなんか思い切り影響を受けた痕跡があると思ったんだけど実際のところどうなんでしょ。

とりあえず少なくとも『来る』が好きな人にはオススメの一本かなと。

お墓から始まるので当然心霊ホラーだろうとタカを括った観客を嘲笑うかのような180度方向転換も見事

窓の外にちらっと悪霊の姿が映り込んだり墓がある場所の不穏な気配だったりゾワっとさせる心霊ホラー的描写を抑えつつも中盤から思い切り舵取りを変え物理的に被害を与えまくってくるクリーチャーホラー要素をどさっと流し込みつつそこに謎日本描写スパイスが加えられていくので舌の上でガラッと味が変わる料理でも口の中にぶち込まれたかのような味変鑑賞体験ができて楽しかった

なんとなくこの舵取りの仕方は『オオカミ狩り』を思い出したけど個人的にはあちらよりもより丁寧なギミックに感じたかなー。
(あちらはあちらで大好きなんだけど、大元が日本であることの必然性とかそこへの話の持って行き方とかその辺は本作がかなり丁寧)

一部では反日だなんて言われたりもしているけど個人的にはそんなことないんじゃないかなあという印象
多くある日本のせいで〜系映画と括って仕舞えばそれはそうかもなんだけど。

どちらかというとそういう偏見や憎悪を次世代のために断ち切ろうという割と前向きな映画じゃないかなあと思ったのである

じゃあすっぱり自身の中で育まれてきた憎悪とか恐怖を忘れられるのかっていうとそんなわけもなく、心の中に呪いのようなものを抱えながらそれでも過去ではなく今とこれからを生きていこうという未来へと目を向けさせる前向きな内容じゃないかなと

特に韓国人女性とドイツ人男性の婚約、それに嫌悪を示しつつも受け入れようと頑張る父親の描写なんかは本作の持つ前向きさの象徴じゃないかなと思うわけで。

つまりはシンプルに日本最悪!!と思わせようという意図や思想によって作られたものには感じられなかったということである

戦国武将とか鬼とか陰陽師とか帝国軍とか色々ごちゃっとさせて日本人には「???」となりそうな満漢全席な日本描写ではあったけどこれもあえて特定の人物や出来事にフォーカスを当てすぎないように色々散りばめる配慮だったのではないかなと思う。

やろうと思えば朝鮮出兵だけにフォーカスを当ててもっとわかりやすくできただろうにそれをしなかったというのはそれなりの意図があるんじゃないかなぁ

陰陽師とキツネの組み合わせなんかもそうなんだけど韓国的にはマニアックな日本ネタをわかった上で仕込んでいる痕跡もあるので多分日本について結構入念なリサーチをした上での描写になっていると思う

まず劇中で使われる日本語のイントネーションも概ね完璧だしね
そこもすごく感心した。

結構聞くに耐えない発音の日本語が流れることが多い中で日本語を喋る俳優さんみんながほぼ違和感のない日本語をロングで喋っていたのはすごい。

なんなら聞き覚えありすぎる小山力也ボイスまで流れ出すからね
めちゃくちゃ上手い人いるなと思ったら声優さんでしたというお話。

とまあ細かい部分にまで気を配って日本の描写を取り入れていると個人的には感じたので反日メッセージなんてチャチな意味合いじゃなくてもっと観ている人間に投げかけたいメッセージがあってのことだろうと僕は受け取った

過去の誰かが埋めた憎悪を暴き、そして次世代のために過去の憎悪に立ち向かう。

墓の中に何を埋めてきたのだろう、それを暴く時に見つける真実とはなんだろう、それと向き合った時に人が出すべき答えはなんだろう。

本作が反日感情の高い韓国でわざわざ制作されたことに強い意義を感じる。

そして何よりも社会にメッセージを向けつつもそこだけを強調しすぎずきちんとエンタメに仕立て観客を楽しませてくれたところが一本の映画として素晴らしい

また機会があれば本作の世界観で続編でもいいし全く別のキャラクターでもいいし何か観たいなーなんてそんな風に思える素敵な映画でした『破墓』。

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