フリーター、ゲーム2周目行きます きさらぎ駅 Re: (2025)感想

明日香と堤 映画

論文のテーマににきさらぎ駅をチョイスする中々に中々な女子大生・堤春奈が取材相手から聞いた話を元に本当にきさらぎ駅にレッツゴーして攻略者の話を参考にRTAしていくという発想の大勝利みたいな内容だった前作からまさかの続編。

よもやよもやである。

怖さはさっぱりないもののゲーム攻略じみた内容の奇抜さと可笑しさ、そこにそっと差し込まれるヒトコワ要素と驚きの連続をくれて飽きさせない名作だったわけだが…
まさか本気で続編を作るとは。
そこが一番の衝撃よ。

とまあどんなもんかと観たわけだが…

いやすごいわ

ちゃんと前作の良さも残しつつ新しさも加え、それでいてしっかり面白かったんだもの

前作生還者である明日香の密着ドキュメンタリー番組というのっけから「そう来たか!」と驚かせてくれる変化球な入り、番組を通して明日香を含む生還者の孤独と苦悩を見せながら明日香が再びきさらぎ駅へと向かう説得力と流れの構築、そして前作の味と方向性をそのままにしながらも前作とそのまま一緒にならない新しさを用意したきさらぎ駅攻略と前作で良かった持ち味はフルに活かしながらそこを基準に変化と進化を果たした立派な続編!

まず良かったのが前作キャラクターの痕跡をちゃんと残してくれていること
前作生還者の宮崎明日香の主人公起用という順当な判断、あれから生還を果たした数名の前作キャラの現在、そして前作から変わらずきさらぎ駅に残り続けている面々、それをちゃんと見せてくれたことが何気ないことかもしれないけど一番嬉しかった。

舞台とルールを据え置きにしながら登場人物は一新!してもおかしくないのにそうはせずに前作キャラクターを大事にしてくれたのが本当に嬉しい

しかもそのおかげで前作主人公である堤のイカれ面白っぷりがさらに深まるというのが非常に綺麗なコンボになっていて素晴らしい。

「光の扉を通った人間が爆死する」という偽の情報を摑まされた状態でループしている堤が明日香生還後も別のメンバーをうっかり生還させ続けてしまっているという、きさらぎ駅攻略装置みたいな存在になっちゃって挙句には一部の人間からは女神扱い。

都市伝説を追いかけたら自分が都市伝説みたいな存在になっちゃった
やっぱり面白すぎるでしょこの女

しかもちゃんと周りの誰かを助けようとする良い人ではあるんだけどすんでのところで命惜しさに他人を切り捨てちゃう土壇場裏切り性質が一生持続してるのも面白い
おかげで堤がきさらぎ駅に行ってからきさらぎ駅からの生還率急上昇である。
前作から変わらず作品の面白さを牽引した最高のキャラクターだよ堤…

で、明日香を主人公にしたこともあって彼女とその周りの現在にもフォーカスが当たりより宮崎明日香という人物の解像度が上がる内容にもなっていてそこが本作の一番の凄さだったかなと

前作では真っ白な善人のような存在とも言えた明日香、そんな彼女が20年前と変わらない姿で現代に生還し幸せでいるかというと実際のところはそんなことはない。
きさらぎ駅生還者にドキュメンタリー番組形式でフォーカスを当ててその不幸と苦悩、孤独の深さを我々に見せていく。
そうすることで明日香が再びきさらぎ駅に赴いてしまうことの説得力をあげてくるのだが結構この辺のくだりがまあまあちゃんと切ない。

ちょこちょこ挟まる「いや笑かしにきてますよね!?」な描写のおかげで薄れてはいるものの明日香の現在が結構しんどくて、明日香を探し続けて弱ってしまったお母さんのことなんかも含めると結構胸が痛んで悔しかった。

きさらぎ駅のくせに…!!
苦しい気持ちにさせられて悔しい…!!

しかもこの明日香の苦悩がちゃんとラストに向けての大事なファクターとして活きていて、めちゃくちゃやってるようで前作以上に芯の通った作品になっているという印象。

この辺は前作の堤が行動力の化け物すぎて共感できる部分が(個人的には)ちょっと少なかったのに対して本作の生々しささえある苦悩を見せてくれた明日香の描写にはほんの僅かばかり共感できる余地があったおかげかもしれない。

そして前作とはまた違うきさらぎ駅攻略描写もすごく良かった。
大いに笑わせていただきました

(まず行こうと決意したらやり方をちゃんと再現すれば確実に行けてしまうきさらぎ駅の相変わらずの気安さに笑いが込み上げてしまう。もうただの現実世界に用意されている隠しマップですよこんなの。)

全員死んだ場合全員死ぬ直前の記憶を引き継いでのリスタートルール、2周目走者のメンバー追加による攻略難易度の引き上げとボスキャラの追加、ボスキャラ攻略のために攻略方法を議論しながらのトライアンドエラーと何もかもゲームすぎて製作陣もその辺取り繕う気全然なさそうでもうずっと笑ってた

(あと前作で使われた木の棒みたいなやつがダンジョン内で入手できる重要武器みたいな置かれ方してるところ好き。)

敵がポップする背後に先回りしてポップした瞬間に敵を撲殺とか前回床が落ちて落下させられたから今度は床が抜けそうなところを避けつつ慎重に牛歩で進行(ドラクエでやったわこれ!懐かし!)とかすっごいゲームっぽい攻略してて前作がRTAならこちらは高難易度クエスト攻略の様相
(黒板にボスキャラのイラスト描いて攻略議論してるホストの図面白すぎ。)

ボス攻略のために現地でアイテム調達、検証が必要な場面ではジャンケンで負けた人間がその命を賭けて検証、勝利のためにパーティーメンバーの命も攻略材料にする一丸攻略はもうなんかコメント欄のないゲーム配信見てる気持ちで応援してたよ

そしてそんな楽しい描写の一方で現実世界に蔓延る人間の悪意の描き方も素晴らしかった

2ch全盛の時代をも凌ぐSNSを通じた誹謗中傷、画像からの住所等の個人情報特定などインターネットをフルに使い一個の人間を限界まで追い詰める現代社会の冷酷さ、そしてそれを善良な明日香に浴びせ追い詰め続けることで人間の残酷さが鮮明になっていく光景は命の危険があるきさらぎ駅パートよりも居心地の悪く嫌な気分にさせられるものだった

だからこそ後半のみんなと絆レベル上げながらゲーム攻略してるターンの楽しさが上がっているのかもしれないけど

よく知りもしない相手を誹謗中傷する人もいれば見ず知らずの人間を助けようとする人もいるしすんでのところで命惜しさに自分が助かろうとする人もいる。
人間の善良さと邪悪さ、どちらも持っていてどちらにも傾きうる、そういう人間が持つ性質を結構描けている作品かもなと思ったり

軽率に他人を貶める現代への社会風刺的な色を差しつつも前作にあった楽しさと疾走感は損なわないように全力でエンタメしている作りが本当に素晴らしい
(まあこの辺のメッセージ性みたいなものは僕が勝手に感じているだけのものでそんな意図はないのかもだけど)

問題点があるとすればせいぜい前作履修必須である点
ここから入ってもいいよとは言えないくらい前作と密接に繋がった作品だからだ。

前作は前作単品で十分に完成された作品だったけど本作の面白さは前作ありきのそれだと思う。
しかしセット作品のような位置ではあるものの蛇足感は全くなく、本作は素晴らしい未来を見せてくれた

正直主人公を差し替えただけの焼き直しになる可能性もあるかなとちょっとビビっていたのだけれど全くの杞憂。
ちゃんとスケールアップしつつ先へと進んでいる内容で本当に良かったのでこの感動はやはり前作あってのもの。

腹捩れるくらい笑わせてくれながらも「そ、そうきたか!!」とこっちを思い切り驚かせてくれる、そんな名作でした。
前作から続けて良いモン見れましたわ。

本作の永江監督がチラズアートの「夜勤事件」を映画化するということなのでそちらも今から非常に楽しみである。

ちなみに…

きさらぎ駅三作目正直いけるよねこれ?
行こうぜ、きさらぎ駅FINALとか。
きさらぎ駅FOREVERとか、永江監督!あんたならやれる!!

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