我らがモンスターバースシリーズ3年ぶりの最新作『ゴジラ×コング』。
当然のように今回も面白かった。
モンスターバースにハズレなし!
ゴジラとコングのモンスターバース二大看板のクロスオーバーとしては前作『ゴジラVSコング』で十分やれることやっただろうにまたこの二匹で作ったタイトルを掲げるのはどうなんだ?他にも魅力的な怪獣や参考にできる既存タイトルはいくらでもあるのに何故?などと若干の不安を覚えながらも映画館へと足を運んだわけだが飛んだ杞憂だった。
大変楽しませていただきました。
ただ今までとはちょっと違う味だったけど。
…ちょっとか?
ヤンキー映画、もしくは北斗の拳
ヤンキー映画だったよ!
いやなんというか他のモンスターバース作品が全然そうじゃ無かった、ということでもないんだけどとにかくヤンキーものを見ている気分になったわけですよ。
通りすがりのヤンキーが行き着いた町の卑怯で厄介な極悪ヤンキーとそのチームを叩きのめすべくかつて覇権を争ったライバルヤンキーに助力を請い肩を並べて極悪ヤンキーに立ち向かうというチャンピオンでコミカライズでもしてたか?みたいなヤンキー漫画文脈シナリオを怪獣で、それも地球規模でやってみましたみたいなノリ。
それもこれも今作のゴジラとコング、そして新登場のスカーキングにどことなく人間味を覚えるせい。
新しい土地でミニコング(ただしガンダムよりでかい)としばきあい飯を共にしたりと交流をしながら地下世界散歩するコングのくだりはセリフ0の身振り手振りメインのウホウホグルァー言ってるだけの映像でしかないのに何故か何を言っているのか何をしたいのかが理解できてしまう。
喋らないタイプの猿の惑星でもみてるのかもしれないと錯覚するくらいに喋らない。
なのにわかる。
虫歯が痛くて治療してもらいに来たり横暴なスカーキング一派に怒りを燃やしたりその細かな心の動き方が人間すぎてコング主人公のヤンキーものをみている気分になるのである。
相手役のスカーキングもナイフぺろぺろし出すので余計にヤンキーもの。
それも気に入らない相手を追い詰めるためならタイマンになんてこだわらずあらゆる手で主人公を追い詰めるタイプなので「こんなチンピラに負けないでくれ!コング!」みたいな気持ちにさせてくれる。
怪獣映画ということを何度も忘れそうになったまである。
ゴジラはゴジラでどこかにすげえヤンキーの気配を感じ取って各地で修行編をする始末。
助力を請いに来たコングの顔を見るなり殴りかかり熱線を浴びせにかかるその容赦の無さは前作ラスボスヤンキーのそれ。
もうめちゃくちゃ頼りになるくらい強いヤンキーだった。

そんなこんなで人間を巻き込んでの三大ヤンキー地上最大の決戦が勃発するのだがもう楽しすぎた。
コングを初めとした怪獣らの内面が見えたこと、人間ドラマを削ぎに削いでコングに尺を割り振ったことなんかが相まってモンスターバースの中でも一風変わった感触の一本になったと思う。
さらに言えば怪獣に人間味や親しみやすさを覚えるこの感触は何気に覚えがある。
奇抜なことをやり始めたくらいの昭和ゴジラのそれだ。
モスラが説得しにくるくだりなんかまんま『三大怪獣地球最大の決戦』でモスラがゴジラとラドンにヘルプを求める場面のオマージュ。
いやなんていうかインファント島とかファロ島にいそうな部族が出てきたあたりの冒険感もかなり近い感触だった。
要はこれ、ゴジラ大好きな海の向こう側の連中がめちゃくちゃお金をぶち込んで豪華かつ現代風に仕上げたハリウッド版東宝チャンピオンまつりだ。
そりゃ面白えわけだよ!
コング、人間時々ゴジラ
ストーリー自体はコング、人間、ゴジラの三つの場面を行き来する構成になっていてコングがその中でほぼメインを張り次に人間ドラマ、そしてトッピングがゴジラの大暴れとモンスターバースの中でも一番ゴジラの出番が少なく感じるようなバランスになっていた。
最早ディスカバリーチャンネルだろみたいなコングとミニコングの地下世界散歩の様子や、危険への対抗手段が薄すぎて暗黒大陸編みたいな空気感になってる人間サイドの物語の外側でたまにゴジラが原発襲ったりコロッセオで眠ったりマンダみたいなやつを引きちぎったりとたった一匹で「これはゴジラ映画なんだよ!!」と言わんばかりの怪獣然とした振る舞いをしてくれるのでゴジラを味わいに来た観客が退屈しないようなバランス調整がちゃんと為されていたように思う。
とはいえだ。
セリフなしで言ってることがわかる猿の散歩やメイドインアビスっぽい世界観の中にあるインファント島orファロ島!!とか独特な楽しみ方、面白みがあるにはあるもののやはりゴジラの量が足りなく感じ「うーん…面白いは面白いけど…」とモニョモニョとした気持ちを前半は抱かされたのが正直なところではある。
だがしかし後半からこの映画はとんでもないドライブをかけ始める。
前半にちょっと物足りなさを感じていた観客を乗せて突っ走り大爆発しその目を覚まさせる怒涛の後半戦である。
起点はコングがゴジラを呼びに行ったあたりだろう。
飲みにでも誘うかの如く気軽にゴジラのところへ行くコングに「おいおいシマに足踏み入れられたらゴジラさん怒るんじゃないのか?」なんて思っていたら案の定とんでもないキレ散らかしっぷりの大暴れでピラミッドを粉砕しながらコングをぶっ倒そうとするゴジラさんが現れてもう観ているこっちとしては笑顔になるしかないだろう。
そこからはもうずっとニコニコである。
まだまだ暴れたりてねえんだよ!!とでも言いたいのかとにかくフルスロットルで暴れるゴジラ、「ちょっ…待って!!」みたいに慌てるもはやお前人間だろみたいなわかりやすさのコング。
こんなおもろいことになるんか!!というくらいにニヤニヤが止まらない白熱の後半戦。
どうやら制作陣の手のひらの上で踊らされていたようだ。
前半ののんびり時々暴力は完全に後半のための布石!狙っていたに違いない。
もう怒涛だった。
最高だった。
サノスみたいなガントレットをつけたコングはいつでも指パッチンしそうだったし満を持して物語の前線に躍り出たゴジラは鬱憤を晴らすように周りの人間がどれだけくたばろうが建物が粉砕しようがお構いなしの大暴れで気持ちよかったしスカーキングとシーモも自分たちの良さをフルに活かした大立ち回りをしてくれた。
おらやれ!ゴジラ!!熱線浴びせろそいつに!!と思わせるくらい生意気なスカーキングは最高の嫌われ役だったし氷河期作りましただなんてとんでもない設定をぶら下げたシーモくんもなんか可愛さ・強さ・かっこよさを秘めたデザインで今作で出番を終わらせないで欲しいと思うくらいに秀逸な存在感だった。
(シーモくんは制作サイドから妙に大切に扱われているように感じたがもしかしたらアンギラス的立ち位置だったのだろうか…ティアマットがマンダでスキュラがクモンガを意識したであろうように。わからん)
あとこれだけはどうしても言っておきたい。
悪党に首輪で繋がれ痛みで調教され使われる苦しそうなシーモくんの描写は子供達の性癖を歪めないか心配になるくらい素晴らしかった。
モスラに並ぶ可愛さがあった。
絶対次も出てきてくれ。
コングがいなかったとしてもお前は来てくれ。
前半までに蓄積された不満点がどうでも良くなるくらいの満足度を与える後半のお祭り騒ぎはエンドロールが流れる頃には「何が不満だったんだっけ。」「なんか…小さいことで文句を言うつまらないやつになっていた気がする…!」と自己嫌悪させるほど。
怖いよもう。
今後
とにかく小難しい理屈とか抜きにゴジラやコングを眺めていれば最高にハイになれる、中期以降のエンタメ性を重視した昭和ゴジラっぽさの詰まった良作だった。
正直なところ前作を超える作品にはならないだろうな、と思っていたし総合的にはやはり前作の方が個人的には高い点数なのだが、前半→後半の緩急をつけた物語の揺さぶり等のテクニカルさはかなり目を見張るものがあったし瞬間最大風速もVSコングに負けず劣らずのそれだった。
まあでももうゴジラとコング擦りすぎたしそれぞれまた単独作品に戻るんだろうな…なんて思っていたらまさかのゴジコン3作目の話が出ているとか。
いや次じゃないよね?
三連続でゴジコンとか狂ってるよ!?
とまあ今後もかなり期待させてくれそうなモンスターバースなわけだが。
個人的にはラドンとかモスラにも焦点を大きく当てた作品も見たい。
あとそろそろ宇宙からX星人だのスペースゴジラだのが来てもいい頃合いじゃないだろうか。
見たくないか?コングVSスペースゴジラ。僕だけか?
まあ何がくるにしても次作も日本版ゴジラへの大きな愛とリスペクトが詰まった素晴らしい映像をまた生み出してくれることだけは確かだろう。
ゴジコンがくるにせよ別の何かが来るにせよ、モンスターバースの今後がひたすらに楽しみである。
