新時代の幕開け 機動戦士ガンダムSEED (2002)

キラ&フリーダム アニメ

∀ガンダムから2年、21世紀最初のガンダムとして我々の前にやってきたガンダムSEED。

∀がガンダム集大成のようなシリーズにとってのエンドマークとも言える作品だったためかもうガンダムの新作は作られないんだろうなとか純粋なあの頃の僕は思っていたわけだが当然そんなわけもなくSEEDはオラオラとやってきた。

おいおい終わったんだよ僕の中でガンダムは、と少しばかり冷ややかな気持ちで迎えた1話。
僕は度肝を抜かれることになった。

先の展開を予感させるかっこいいOP、スタイリッシュなキャラとメカニック、随所に盛り込まれた1stオマージュとその上に構築されたSEED独自の設定がもたらす悲惨なドラマ、見る人を惹きつけてやまないその物語は当然のように多くのファンを獲得しガンダムというコンテンツの力を改めて世に知らしめた。

それはまさにガンダムシリーズの新しい始まりを予感させる新世紀のファーストガンダム足る存在だった。

その人気と勢いは凄まじくガンダムとしては久しぶりすぎるくらいにそれこそアナザーでは初めてTVで直系の続編SEED DESTINYが制作されるほど。
さらに言えばDESTINY最終回後発表されていたのに一向に公開されないまま製作中止したと思われていた劇場版が20年もの時を超えて実現しまたもSEED旋風を巻き起こすなど作品が持つポテンシャルは今なお測りきれない。

ガンプラもバカ売れしたし…(なぜかイージス三体買った)

最終回以降総集編のスペシャルエディションやHDリマスターなどがリリースされているが個人的意見として初見の方にはやはり本放送版を見てほしいなと思ってしまう。
スペシャルエディションやHDリマスターでの新規カット、表情の書き直しなど本放送版からの差異によって深まるキャラの心情考察、浮いてたはずのヘルメット、あんなに一緒だったのに…なんでだ石井竜也さん、やっぱりお前が4クール目を飾るべきだよFIND THE WAY etc…などいろんな情念が湧き上がってくる。

なので何から見た方がいいの?なんて質問はリアタイ勢にしてはいけない。
黙って自分が見やすいと思うものから触れるのだ。

SEEDへの愛憎を20年近く燃やした、そんなやつは少なくない。
それほどまでに人を燃やし、惹きつけた作品なのである。

すごくガンダムって感じだ…

戦争とは無縁に暮らしていたはずの少年キラ・ヤマトがザフトの作戦により戦場と化してしまったヘリオポリスでかつての幼馴染アスラン・ザラと再会することからその物語の歯車は大きく回り出す。

キラとアスラン、それぞれ連合とザフトという対立関係にある組織のパイロットとして対立し望まぬ衝突を繰り返しながら二人の視点でそれぞれの組織の事情や人間関係、個人の葛藤を映すある意味W主人公のような構造の物語になっている。

ナチュラルの中に一人混じり疎外感や孤独を感じながらも一緒に避難した友達や民間人を守るため、自分にしかできないことだからと懸命に戦い続ける中でみるみるうちに精神的に消耗し壊れていくキラ、親友で同じコーディネイターでもあるキラとの望まない対立とそれでも命令を遵守しなくてならない軍人としての使命に揺れ動き苦しむアスラン、二人の目線からそれぞれの組織の事情、出会い、葛藤、人間ドラマなどが映し出されるのだがこれがまたしんどくも見応えがある。

そもそも秘密裏に開発されたMSと新造戦艦を目的とした敵軍の強襲、崩壊するコロニーから民間人を戦艦に乗せての脱出など既視感たっぷりな1stオマージュをベースとしたプロットになっているのだがナチュラルとコーディネイターという果ての見えない終末感漂う種族間戦争、敵になってしまった幼馴染との残酷なドラマなどのお陰で既視感を塗りつぶすほどにSEED特有の味があるストーリーになっている。

序盤は特に昼ドラっぽさのあるギスギス感が付き纏いそこがしんどくも面白いところだと個人的には思う。
(有名な「やめてよね」なんかはこの味わいを象徴するかのようなセリフだろう)

2クール目で露骨にランバ・ラルのような主人公に成長のきっかけを与える役割を持ったバルトフェルドとの交流と対決(しかもちゃんと舞台が砂漠)を描きその後も1stっぽいことなぞっていくんだろうな…と思わせておきながらいよいよ3クール目になってくると1stオマージュであることを視聴者が理解していることを逆手にとったかのような意外な「転」を見せつけてくる。

「ならどうやって勝ち負けを決める?どこで終わりにすればいい?敵である者を全て滅ぼしてかね?」

戦争というものへの疑念、何のために戦うのか、誰のために?一体どうすれば終わるのか?
キラとアスランそれぞれがそれぞれの心と戦争に向き合った先にたどり着いた場所、相対することになる歪み。

4クールに渡って描かれた戦争の中で怒りと憎しみに塗れながらもそれを乗り越えようともがいた少年少女たちの戦いとその行き着いた先にあるハッピーともバッドともそのどちらとも言い切れない虚しさを覚えそうになるラストは1stのそれとはまるで違う味わいだ。

単に1stをなぞらえただけの作品と断じることはできないくらい別の感触がある結末であり、1stという基礎の上に新しい世代の人間に向けて作られた新世紀のガンダムその始まりに相応しい作品だったのである。

そしてSEEDの強みの一つモビルスーツ。
まあガンダムといえばこれが強くてなんぼなところはあるけどSEEDのMS周り、特にガンダムは少年を惹きつけて離さない妙な握力があったように思う。

1話から登場するストライク、イージス、デュエル、バスター、ブリッツはそのデザイン、持たされた役割を引き立たせるような特徴的な武装の数々、覚えやすく印象に残るネーミング、乗り込むパイロットの個性の強さとそれぞれの人間ドラマの交差など色んな要因が積み重なり魅力が何乗にも膨れ上がっていた。

(何となくだがガンダムとそれを取り巻く設定周りはガンダムWの遺伝子を個人的には感じる。)

状況に合わせて換装しながら戦うオールマイティなストライク、MS形態とMA形態を切り替えながら戦う超攻撃的なイージス、バランス重視のデュエル、中・遠距離攻撃に優れたバスター、敵陣深くへの電撃侵攻を目的としたブリッツ、とそのコンセプトに基づいた活躍はそりゃガンプラもバカ売れするわってくらいにワクワクするものだった。

その後キラとアスランの新機体となるフリーダムとジャスティス。
この2機が本当に凄まじい人気で。
それもそのはず。

キラとアスランの成長エピソードに連動する形での登場でありその物語性の高さ、派手で見栄えある戦闘などは視聴者に強烈なインパクトを与え多くのファンを今なお虜にし続けている名機体である。
PHASE-38『舞い降りる剣』での伝説的なかっこいい登場は今なお語り草となっている。
復活したキラ自身の精神的成長を感じさせる戦い方も相まって最高にカッコいい。

さらにキラとアスランにしつこく絡みにくるフォビドゥン、レイダー、カラミティもまた悪そうな見た目そのままの悪い立ち回りと面白い戦闘スタイルで物語を盛り上げてくれた。
個人的にはフォビドゥンがかなり好き。

また今となっては周知だが当時は前情報一切なしに登場し多くの視聴者を驚かせたプロヴィデンスガンダムの魅せ方も素晴らしかった。
(HDリマスター版だと普通にOPに登場するのでちょっと寂しい気持ちにさせられたりもする。)

機体の設定や演出が物語と高いレベルで連動・関連付き見ている人間に欲しい!かっこいい!!と思わせるのが異常にうまいガンダムであり個人的にはそういう意味では00年代以降のガンダムで最もガンプラの購買欲をそそる見せ方が上手い作品だったんじゃないかなと思っている。

SEED最大の特色はこれだろう。

これまで多くのガンダムにおいて組織と組織、あるいは個人同士の対立関係を描いてきたがSEEDではもっと根深い問題を取り扱っている。
それがナチュラルとコーディネイターというある意味での種族間問題だ。

このへんを掘り下げて書くと長くなりすぎるので割愛するがまあ結構泥沼な関係で互いが互いに偏見を抱いたり差別をしていたりと個人を超えたもっと大きな組織単位で、それもワールドワイドにやっているのでもうとんでもなく酷い。
おかげでシリーズ最高クラスの終末感だと思う。

遺伝子操作技術の発展が行き着く一つの可能性、その究極系がこのSEEDであるなら人類がたどり着く一つの可能性を見せられているような気分にもなる。
連合もザフトもブルーコスモスもやることが過激すぎてやりすぎやりすぎ人類滅亡しちゃう!!なんてドン引きした気持ちになるわけだが今にして思えばクルーゼ最高に楽しかっただろうなこの人類終了寸前ギリギリ限界バトル…

核を無効にするNジャマーをさらに無効化するためにNジャマーキャンセラーを開発→データ盗まれて連合も核撃てるように、核大量発射→ザフトというかパトリックブチギレからのジェネシス発射、ノリにノって地球まで撃とうとする…など終盤だけ切り取っても人類滅亡RTAにチャレンジでもしているんだろうかと疑いたくなるくらいのプレイングを両陣営が披露してくれる。
視聴者ドン引きである。

まあそんなこんなでSEEDではこの二つの人種の対立が描かれる。
当然差別や偏見も。
ブルーコスモスのように自覚的に殺意たっぷりにコーディネイターに相対する者もいればパトリックのように地球をジェネシスで焼いちまえとなるくらいにナチュラルを憎む者もいる。
この辺は極端すぎてもう笑えるのだが個人的にキツかったのはキラの身の回りで起きた小さなことの積み重ね。

キラの友人たちはフレイを除いてみんなキラの置かれている状況のデリケートさから彼に気を遣ってはくれるのだがサイがラクスの歌声を「遺伝子弄ってそうなったのかな」と悪気なく喋るシーンなどを代表に要所要所に自然とコーディネイターへの偏見や差別的発言が溢れる場面がちょこちょこと挟まってきて胃を痛くしてくれる。

悪意に満ちた声よりも何気なく自然にでた声の方が深くつき刺さることを実感してこれが大変しんどい。

しかしテーマと描写が重い分こうした別種族への偏見や無自覚・自覚的差別意識を乗り越えそれぞれ個人の意識が前進していく過程も丁寧に描かれている。

自信が抱いたコーディネイターへの憎しみをフレイを鏡にすることで思い知り苦しみながらも前に進もうとするミリアリア、見下していたナチュラルから直接憎しみの籠った眼差しと刃を振り下ろされそこに生きた人間がいることを理解したディアッカ、ディアッカとの問答で命令のままナチュラルと戦うことや戦争そのものへの疑念を深めたイザークなど多くのキャラが種族ではなく個人を見つめていくようになるまでの過程が豊富で濃厚なのだ。

一方で差別意識や嫌悪感を変えることなく憎しみに走り続けるパトリックやアズラエルなどもいて多種多様な形で種族間の憎悪を味わえてお腹いっぱいになりすぎてもういいですって言っても次から次へとお出ししてくる困った名作である。

面白いのは遺伝子操作されているから120%コーディネイターの方がすごくて絶対にナチュラルは勝てませんという設定ではないところだろうか。
人類最初のコーディネイターであるジョージ・グレンは銀メダリストだしラスボスのクルーゼもその出自から考えればナチュラルであり、ナチュラルの身でありながらコーディネイターたちの中にあって努力でトップガンに上り詰めているしムウもまあ不可能を可能にしている。

積み重ねた経験と努力が出自を凌駕することもあるというのはSEEDが提示する一つの希望かもしれない。

そしてキラとアスランについて。

SEEDといえばと間違いなくこの2人だろう。
戦争によって引き裂かれた2人の友情がどうなってしまうのか、そのドラマに惹きつけられた人も少なくないはず。
ちょっとこの2人の話ウジウジしてるしなんかくどいな!!と思いつつもしっかり楽しまされていたので当時だいぶ悔しかった思い出がある。

戦争によって引き裂かれるキラとアスランの友情、2人がいかに戦うことを望まないかを2クールかけてタメにタメてから描かれる2人が怒りを剥き出しに醜く殺し合う構成はいやらしくも見事。

こんな中盤にガンダムを最終決戦くらいのノリでぶっ壊しまくる死闘を披露するとは思わずいい意味で意表をつく展開だったと個人的に思っている。
互いを心配し思いやっていたはずの2人が憎しみをぶつける殺し合いまで演じていく戦争という状況の恐ろしさ(特に種割れした瞬間脚サーベルで切り掛かったり殺意MAXな自爆まで披露したアスラン。怖すぎるぞお前)、一体何と、何のために戦っていたのか、そしてこれからどうしていくべきなのか、新しい道を模索しようと進み始める2人の視点から「転」を描きその運命を再び、今度は以前までとは違う形で交差させる展開には妙な感動があった。

キラ・ヤマト
理屈を説明されてもいややっぱり生きてるのはおかしいよ!と言いたくなるくらいタフなキラ。生身じゃ弱いとよく指摘されるけどそうかなぁ?比較対象アスランにしてません?

正直なところこの幼馴染ライバルは互いを本気で憎むようになり本気で殺し合ってどちらか、もしくはどっちも死ぬ最終回になりそうだななんて思っていたから中盤で超本気殺し合いをやることにもびっくりだったし手を取り合うのもびっくりだった。
(なんか3クール目OPでフリーダムとジャスティスが同じ方向にビーム撃ってるけどせいぜい一時共闘とかそんなんだろと思ってた)

改めて戦争と向き合うことを決意したキラがフリーダムを引っ提げて復活するPHASE-35『舞い降りる剣』、アスランがキラと共闘するPHASE-38『決意の砲火』の素晴らしさ、カタルシスは2人の葛藤や苦しみをドロドロとくどいくらいに描いたからこそだろう。

2人が手を取り合った後は全員ぶっ倒して終わりだぜ!!となるわけもなくその後もキラは自身の出生の秘密を知り大きく苦しみ、アスランも父・パトリックの暴走を止めることも説得することもできないまま目の前で父親を喪うなど最後の最後まで時代と戦争は2人を苦しめ続けた。
もうやめてあげろよ!!と言いたいがこれがガンダムSEEDなのである。
主役級2人をとことん殴るのである。

「僕たちはどうしてこんなところまで来てしまったんだろう…」

キラが虚空に呟いたセリフは重くのしかかり、中島美嘉の『FIND THE WAY』も相まってこの先2人は本当に幸せになれるんだろうか、この世界は真っ当な方向へ進めるのだろうか…なんてしんどい気持ちにさせられて最後の瞬間までスッキリ!!なんてさせないのであった。

そしてこの2人の苦悩は続編のDESTINYでもまた…

ある意味で物語に愛されすぎた2人である。

アスラン・ザラ
見返すとこの頃からかなり面白男であることが再確認できるアスラン。伝説の始まりである。

ちなみにPHASE-01『偽りの平和』終盤にキラとアスランが戦場で再会し爆炎の中ガンダムが起動し立ち上がる、そして流れ出すSee-Sawの『あんなに一緒だったのに』…芸術点の高すぎる再会からのEDは今見返しても美しい。
あまりにも完璧なEDの入りすぎてそういう意味ではガンダムシリーズでもトップクラスの完成度じゃないかなと思っている。

そしてSEEDには魅力的な女性キャラが何人も存在するが今回はキラに大きな影響を与え与えられの関係を築いた2人のヒロイン、ラクスとフレイについて触れていこうと思う。

SEEDと言えば、というよりキラのパートナーといえば真っ先に連想されるのはアスランを除けばこの人であろうラクス・クライン(ここに肩を並べそうなアスランは何なんだ)。

ただの天然ふわふわお嬢様キャラと見せかけて敵軍のキラを思い切り自陣で看病したり極秘で開発していたフリーダムをぶん捕ってキラに与え戦争が激化した終盤では自らも陣羽織スタイルでエターナルに乗り込み出撃をするなど数多くの大胆不敵がすぎるアクションを見せ多くの視聴者を動揺させてくれた。

さらに苦悩するキラやアスランに核心をついた言葉を残し2人の成長を促すなどその存在は作品的にもデカすぎて続編のDESTINYとFREEDOMでもその重要度は健在かつそのおかげでだいぶ大変なことが起きたり巻き込まれたりかき回したりとにかくSEEDという作品の中心にはこの女性がデーンとあり続けている。

人外じみた傑物かと思いきや8話時点で優しくしてくれたキラに恋をしてキラをそこから想い続けている乙女な可愛らしい一面もあるので困る。
キラを見つけて幸せになれたと言い傷心のキラに寄り添い続ける健気な少女の姿はFREEDOMを経た後に見返すと妙な深みがある。

ただSEED時点のキラはラクスに惹かれている心がある一方でフレイへの気持ちの比重の方が重く、「帰ってきてくださいね私の元へ」と言うラクスに向かって優しく微笑んだ後唇ではなく頬へのキスで返すという遠回しの優しい拒絶(だと僕は思った)をしており、SEED時点でのラクスとキラの恋の関係はどちらかというとラクスの片思いの色が濃い。(これも個人的に思ってること)
FREEDOMから入った人はちょっと微妙に壁がある空気感に驚くかもしれないがこのヤキモキした気持ちにさせられる2人が結構好きだったんだ、この頃は。

ラクス・クライン
たまに今刺してきたなみたいな怖い瞬間があるように感じるのは考えすぎでしょうかラクス様。そんなところも麗しいと思います。

そしてある意味今作で最もキラと強烈な関わり合いを見せた女性フレイ・アルスター。

一部ファンからガンダム3大悪女に数えられるその活躍ぶりはSEEDのドロドロ成分の7割くらいを背負った獅子奮迅のそれ。

コーディネイターへの偏見をバンバンぶつける序盤のノンデリカシーっぷりにはアズラエルもニヤニヤすることだろう。
ただ自覚的であれ無自覚であれコーディネイターへの差別や偏見を多くのナチュラルが抱えているのでフレイ個人の問題というよりはもう社会そのものの問題ではないかと思うが。

父親の死を契機にコーディネイターへの憎悪が加速し、キラを「コーディネイターを1人でも多く殺すための復讐の道具」として利用するために精神的に衰弱したキラを体を使って籠絡するやり口は土曜18時に流すには生々しくしっかりとお茶の間を凍り付かせてくれた。

利用するつもりだったキラに本気で惹かれ始め関係を修復する機会を持つこともできないままに離れ離れになり最終的にはキラの目の前で乗っていたシャトルを撃たれ死んでしまうというのはあまりにも容赦ない展開というか物語が美しすぎてキラはおろかこっちの心にも大きな傷を残してくれた。
終盤のキラに会いたいという気持ちが本当だったことがわかるだけに辛い。

戦争によってコロニーが破壊され、父親も亡くし、敵軍に捕らわれ利用され最後は戦場に散るその過酷すぎる人生はまさに戦争の被害者そのもの。
その残酷な結末はキラにどれだけのトラウマを与えたか想像に難くない。
以降仙人みたいに悟ったような、どこか虚な様子で過ごすキラの姿がDESTINYで見られるようになったのはここでフレイを目の前で死なせてしまったことも大きな原因になっていると思う。

三大悪女なんてカウントされてはいるがフレイに関しては同情の余地が十分にある歪み方なのであまり悪女というには適していない気がする。
フレイの根本は「優しい普通の女の子」だと思っているので…
悪女ってのはもっとこう…

最期は精神的なしがらみから解放され素直なありのままの気持ちでキラに言葉を告げることができたのでそれだけが救いかもしれない。
なおアムロとララァのっぽいキラとフレイの最後のシーンだが実際にはカイとミハルのオマージュでありフレイの言葉はキラには届いていないしフレイの姿もキラには見えていない模様。
人の心とかないんか?

ラクスは間違いなくメインヒロインなのだがこのフレイという少女が残した爪痕がデカすぎて…
デカいからこそFREEDOMでああなったことに大きな意味を感じるわけだがそれはまた別の機会にということで。

そしてこの男に触れないわけにはいかない。
ラウ・ル・クルーゼ!

中盤までアスランが所属したクルーゼ隊の隊長でありその指揮・人望は確かなものでその采配は大いにアークエンジェルを苦しめ続けた。
その暗躍ぶり、内に秘めた憎悪、仮面とどこか1stのシャアを思わせるキャラクターである。

冷静な指揮官のような振る舞いを序盤は取っていたが物語が進むにつれてじわじわとテンションが上がっていきキラに出生の秘密を明かしたあたりからもう抑えが効かなくなりキラとのラストバトルでは超ハイテンションレスバを仕掛けてきた。

キラが何を言っても
「わからぬさ!!」
「知らぬさ!!」

とコミュニケーションを拒絶して大声張り上げて自論をぶつけ続けキラのMPを確実に削り取った。
そのくせちゃんとキラにグサグサ刺さる内容だったので議論放棄型レスバとはいえ効果はバツグンだったのだいぶタチが悪い。
「それでも守りたい世界があるんだ!!」
そう思えるだけの積み重ねをできたことが世界とキラにとっての救いだろう。

ラウ・ル・クルーゼ
なんかもう全体的に派手で見応えがあったクルーゼ。怒涛の舌戦で終盤の空気をとにかく温めてくれた。

自身の才能を完璧に受け継ぐ後継者を求めたアル・ダ・フラガのクローンでありこの世界の歪みを象徴するかのような存在だったクルーゼにとってこの世界は議論するような段階は遥か昔に過ぎ去り誰にもどうにもできないほどの憎悪に満ちていたのかもしれない。

アズラエルにニュートロンジャマーキャンセラーのデータを流し人類が滅びの道へと向かう手引きを裏で進めその絶望や憎悪を押し付けるような行動を取る一方でムウに討たれるならそれもいいと思っていたかのようなセリフを残したりキラに敗北した時はどこか安堵したかのような笑みを浮かべたりと自分を止めてくれる存在をどこかで求めていたかのような素振りが見受けられる。

悪は悪なのだがこの世界そのものの被害者でもあり彼の絶望からくる行動は支持しないもののわずかに納得ができてしまう。
出生から思想、ハイテンションレスバに至るまでとにかく面白い悪党でガンダムシリーズ全体の中でもかなり好きなキャラである。

リマスター版ではクルーゼに囚われたフレイがベッドの上で裸で涙を流しているとんでもないカットが追加されており肉体関係とか持たないでしょこの人とか思ってた僕に最大級の衝撃を走らせた。
想像にお任せしますとのことだがもしそういう関係ではないとしたらフレイが敵地とはいえ全裸じゃないと寝れない豪胆な女になってしまうし関係を持ってたら持ってたでクルーゼが15歳の女の子に手を出すあれな奴になってしまうわけで…
まあでもフレイというコマを懐柔し手元に置いておくためならそういうことも手段の一つとして使いかねないかクルーゼは…
いや…でも…

どうなんだお前!!そこんとこ!!

まあとにかく色んな意味で見応えのあるラスボスで物語終盤のテンションはこのクルーゼとアズラエルが背負っていたと思う。
クルーゼが気に入りすぎてしまった結果次作DESTINY以降「なんかレスバが足りないなぁ」みたいな物足りなさを覚えるようになってしまった。

最高のラスボスだよクルーゼ…

そして1stっぽさも見せつつも全く別の味わいを残してガンダムSEEDは幕を閉じ、2年後のガンダムSEED DESTINYにバトンが渡されるのだった。

これがまた問題児でもう周りの知人からネットに至るまで荒れに荒れ、ある意味では大盛り上がりを見せてくれて一視聴者として頭を抱えるハメになったのだがそれはまた別の機会にということで。


本当ならイザーク、ディアッカ、アズラエルあたりにも触れたかったけどまとめる能力無さすぎてこれが限界。
もしかしたら個別に触れるかもしれないし触れないかもしれない…
わからぬさ!!
とりあえずこれもまた別の機会にということで。

それではこの辺で。

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