「宇宙旅行したいけど仕事が忙しくて時間が取れないな…」
そんなアナタにおススメの一本
行け!!インターステラー!!
インターステラーとは
さらっと説明すると人類滅亡しそうだけど地球上じゃもうどうしようもないのでいざ宇宙に旅立とうぜ!というお話。
そんな無茶な…という命題を果たして見せたのは『ダークナイト』『インセプション』などでおなじみ我らがクリストファー・ノーラン監督。
ノーランが今回もやってくれました。
インターステラーは「難しい」と言われることも多く、なんとなく敬遠している人もいるかもしれないが実際にはそんなことはない。
…いやそんなことはあるかもしれん。
確かに専門用語は多いが大事な部分は噛み砕いて説明してくれるのでノー知識でもある程度は問題ない。
というかまず映像のわけのわからない迫力に圧倒されて大半の人がそれどころではなくなるので問題なし。
何より映画の根幹にあるのは人間ドラマでありそこで描かれるものをちゃんと受け取ることができていれば問題なくインターステラーは楽しめる。
当然物理や宇宙の知識があれば劇中の宇宙描写はより楽しめるものになる。
物理学者のキップ・ソーンを監修として迎えたことで科学的表現の厚みは増しているため知識のある人にはまた違う面白さが見えてくるだろう。
知識のあるなしを問題とせず一本筋の通ったストーリーと映像表現で観客を引き付けていくノーラン監督作品の魅力は今作でも健在だ。
終末世界にて
怪獣に襲われるわけでもなく核戦争が起きるわけでもない。
今作の人類は食糧危機によってジワジワと真綿で首を絞められように滅びつつある。
学校を卒業しても食料難に対応するため農夫になることを子供たちは期待される。
農業を頑張っても疫病で次から次へと作物が育てられなくなる。
なんかやたらと砂嵐が起きて全身砂まみれになるわと
かのシャア・アズナブルも「地球が持たん時が来ているのだ!」と怒りを露にするであろうくらいにインターステラーで描かれる地球は「人の住めない惑星」であることが協調して描かれている。
もし自分がこんなどん詰まりみたいな状況にいたら
こんな世界やってらんねえよ!!
と切れ散らかして不貞寝している。
間違いない。
序盤は衰退した世界観がテンポよく描写されるが、中でも軍隊が解体され役割を失い空を飛び続けるドローンのシーンは象徴的だ。
アメリカの上空をインド空軍のドローンが飛び回るなんて本来ありえないことではあるが、アメリカクラスの国家にすら防衛機能が存在しなくなっているということを意味しているシーンでもある。
人類の滅びが差し迫ったことにより国家間の戦争がなくなり、ある意味で平和が完成したとも捉えることも可能であり実に皮肉だ。
序盤、観客は主人公クーパーの視点を通して衰退し滅びゆく世界を実感する。
全体から考えればほんの少しの間の描写ではあるがこれが素晴らしい。
不安に駆られながらも家族と日々を生き、夕暮れ時には覇気を失った街並みを肴に昔を懐かしむように酒を飲む。
もの哀しさすら覚える光景だがもしかしたら人類の終末とは案外こんなものなのかもしれない、とすら感じる。
緩やかに、そして確実に滅びていくこの世界の乾いた美しさが堪らなく好きなのだ。
最高の宇宙
それはそれとして今作の醍醐味は間違いなく宇宙及びSF表現である。
宇宙を舞台にした作品はそれこそ星の数ほどあるがインターステラーのそれはフィクション作品におけるSF的表現のステージを一段階上げたのではないだろうか。
ブラックホールの中の迫力は圧巻の一言。
このへんの映像何もかも凄すぎてこれだけで金とっていいレベル。
あくまで物語の軸は主人公クーパーとその娘マーフィーの親子愛であり、そのドラマ部分に科学的知識を肉付けしていくことで一見難解そうな情報を物語ごと受け入れやすくなるよう設計されているのは妙技だ。
例えばだが今作では重力の影響で遠く離れた星と地球とで時間の進みが大きく異なっていることが示される。
遠く離れた惑星を調査するクーパーはほとんど年齢が変化しないのに対し地球に残された幼いマーフはどんどん成長していく。
中盤ほんの少しごたついてしまった影響で時間が23年分あっという間に過ぎてしまい娘が自分と変わらない年齢になってしまうくだりは言葉ではウラシマ効果の理屈を理解できなくても親子の物語として見せられたことで強制的にわからされてしまう。
親子という軸があるからこそ宇宙の無情さ、壮大さがよりダイレクトに観客に伝わるのだ
ストーリーをドラマチックに仕上げるためのSF設定による補強が完璧すぎる…
そしてまあ何よりもこの映画の宇宙は楽しい。
辿り着く星の実在性の高さ(なんかありそうじゃん…あんな星…)、実際に異星に降り立ったかのような緊迫感、広大な宇宙の無情な冷たさ
すべての表現への興奮が途切れないまま駆け抜ける3時間はとにかく楽しい。
今作の宇宙を取り巻く科学的表現が正しいかどうかは正直知らない
ただとにかく楽しかったのでヨシ!!
あり得ないなんてことはあり得ない
某強欲なホムンクルスが残した名言だ。
なにかあったらこのセリフで防御して欲しい。
結構硬いぞ。
今作を観た人の中にはある場面を取り上げて「こんなことはありえない」「科学的ではない」と否定する人もいるだろう。
しかしこの映画はそんな「あり得ない」をただのご都合主義と断ずるか、もしかしたら未来では明らかにっているのかもしれないと捉えるか、その判断を観客がどう下すか、その選択そのものを仕掛けにしていると思う。
劇中でわざわざクーパーに否定された「愛」や「幽霊」。
科学的考証が為された今作には似つかわしくないふわふわとした単語だ。
劇中でこんな話が出たらオカルトめいていて失笑したくなるのもわかる。
実際、突然のアメリアによる愛を語るパートが来た時はなんやねんこいつと思ったものだ。
しかしこの映画ではそれらにも意味を持たせた。
「愛」や「幽霊」にとどまらず現代においてオカルト的事象を含み不確実とされるあらゆる物事の意味が100年後、200年後には科学で解明されているかもしれない。
人間が観測するあらゆることに理由や意味があるのなら、もしかしたら…
その「もしかしたら」を許容できるか否かがこの映画の科学を受け取る上での肝であり、観客が試されている部分なのではないかと思う。
ちなみに僕は幽霊もUFOもガチでいると思ってるしイエティもいて欲しいしなんならネッシーもいてくれ。
だっていた方が面白いじゃん…(自分が関わらない前提)
総評
とりあえずこの映画を一言で表すとしたら
「3時間で体験する疑似宇宙旅行」
前述の通り宇宙を取り巻くインターステラー式科学的表現の数々は映像の圧倒的迫力で脳みそに宇宙を叩きつけてくる。
さながらゲッター線を浴びた気分
そうか…そういうことだったのか…!
宇宙とは!五次元人とは!!
インターステラーとは!!
観終わったころには本当に一旅終えた気分になれる満足感がある。
加えて、3時間の尺の中に疑似体験を実感するほどの多すぎる情報を詰め込みつつ親子愛を中心に人類存亡を賭けた物語を構成ししっかりと着地させたのは凄すぎると思う。
しかも伏線の散りばめ方と回収の鮮やかさがとにかく光ってる!
映像だけじゃなくてとにかくバケモノみたいな構成力の高さにも着目してほしい。
どんな脳みそしてたらこんな映画が作れるんだ…
SFに興味がない人もSFが好きだという人もまとめて引き付ける、とんでもねえ重力で引き寄せてくる最高の映画なんですよ…というお話。