「あの」きさらぎ駅が映画になりました、と。
まあB級だろうな…と思うよね。
(いや実際そうではあったんだけど)
しかしただ元ネタをなぞらえて作られただけの作品ではない。
きさらぎ駅という題材で映画を作った場合どういう流れでどういうオチになるのか?
多くの人間が似たような結末を想像することも想定した上でそこから物語を外して観客を驚かせてやろうという野心とそれを実行できるだけの確かな構成力で練られた見事な脚本に膝を打つ名作B級ホラー映画だった。
題材を適当にこねくり回して映画っぽくしただけでしょと舐めてかかった僕はまんまと見事にやっつけられた。
通常、ホラー映画は怖さから画面に目を向けることの拒否感との闘いもあると思っているのだがこのきさらぎ駅ではそんな瞬間はほとんどない。
「怖い」よりも「面白い」が遥かに上を行くせいでむしろ画面から目が離せない変わり種。
とにかくシンプルながらギミックの妙が光っていた。
そもそもまずきさらぎ駅を卒論のテーマにする女子大生が主人公な時点でもうすでに大分様子がおかしい。
おもしれー女がすぎる。
こんな女が主人公なんだから起こるべくして起こったのかもしれない
きさらぎ駅RTA
生還者インタビューを通じてきさらぎ駅への解像度を上げてしまい何を血迷ったかおっぱじまったきさらぎ駅RTA。
生還者の行動をトレースしたら本当にきさらぎ駅に辿り着けてしまうお手軽さ、このアホみたいな行動を当時5人も実行していたという事実、生還者からきさらぎ駅の怖い話を聞いた直後のはずなのに実践してしまう主人公のお化けメンタル、同時に襲い来るこれらの情報に笑いが止まらなくなってしまう。
そして当然のように何故か生きている死んだはずの人たち、何故か繰り返されている時間、理屈はもうどうだっていい。
全てを察する主人公と観客。
きさらぎ駅RTAのスタートである。
ついでに前のプレイヤーが撮り損ねたトロフィーも回収していくか~とでも思っているのかガンガン状況に適応する主人公のホラー適正の高さに舌を巻く。
もっと狼狽えろお前は。どんな大学生活送ればそうなるんだ
酔っ払いのお酒を守ったら酔っ払いが飲み過ぎで道中げーげー吐き出したり最大の混乱を招いたチンピラを初手で退場させることで武器の入手と中盤の何も起きない時間をゲットしたりと話に聞いただけのくせに適格で鮮やかなプレイングはまさにゲーム2周目の貫禄。
行ったことないはずの場所で強くてニューゲーム状態という矛盾!
流石きさらぎ駅の卒論を書こうとする女子大生。普通じゃない。
その結果犠牲になる怖さ。
主人公が強すぎてホラー映画なのに一ミリも怖くない。
怖くできそうな瞬間があったにも関わらずちょっとふざけてたりするのでマジで捨てた可能性すら感じるレベル。
「サプライズ(2011)」が好きな僕がこの映画を好きにならないわけがない。
あれもホラーの定石や観客の思い込みを逆手にとって驚かせてくるタイプだった。
だがこの軽快なRTAも布石。
最後にしかけられた罠に「あー!なんで思い至らなかったんだ!」と悔しくなってしまった。
結局やっぱりそういうところだよね一番怖いのは
とにかく面白い
観客の心情までも計算に入れたかのような二重三重に仕掛けられた脚本のギミック
覚えやすすぎる属性が与えられた登場人物の程よい尖り具合
ほんの少しのJホラーらしい後味の悪さ
ホラーが苦手な人にもおすすめできる面白ホラー映画だった。
時間もそれほど長くないし内容も複数人でお菓子頬張りながら笑って観れる気軽さ気楽さがあるので同時視聴適正が高く地味に長く語られ続ける映画になるんじゃないかなとも思ったり。
別ルートのトロフィー回収する続編とかも是非やって欲しい。
血管で攻撃してきたり触れると燃えたり爆発したりエシディシみたいなやつだったなきさらぎ駅くん