トム・クルーズ主演スパイアクション第5弾。
ゴースト・プロトコルというデカすぎるハードルを前に今作が採った選択は…
派手にいくぜ!!
今なお語り継がれる派手過ぎるアクション、設定と実績を盛って箔をつけた宿敵とでもいうべき敵組織シンジケート、前作ではちょっとしか出番が無かったルーサー参戦、レーンやイルサなど後のシリーズにも影響を与える名キャラクター達の初登場とシリーズの中でもかなり爪痕を残した作品だ。
イルサ
前作ゴースト・プロトコルでその存在を明かされた犯罪組織「シンジケート」とイーサンの対決、その傍らで起こるIMF解体(また解体されてる!!伝統芸!!)。
組織的なバックアップが期待できない中限られた人員、装備で巨大な陰謀にイーサンはどう立ち向かうのか!?というのが今作ローグ・ネイション。
既視感があるのは多分気のせいではない。
IMF解体、本来なら味方サイドの組織に追われながら敵を追うイーサン等書きだすとゴースト・プロトコルと概ね同じようなストーリーではあるがそこに今作初登場の女スパイ枠イルサと冷酷な敵レーンというインパクトあるキャラの物語、そしてCIA、IMF、MI6と国を超えた組織間の関係などを織り交ぜることで別物であるかのような味わいになっているのは見事。
スパイという果ての無い闘い続ける人生の悲劇を映し出すイルサの物語が今作の大きなフックであり、それを物語るかのようにイルサがイーサンに引けをとらない活躍を見せてくれる。
交流を重ねる中でイルサとイーサンが男女の仲ではなく同志のような絆で結ばれていく関係性はヒロイン、というよりもイーサンと肩を並べるW主人公といっても差し支えないだろう。
ヒロインはどちらかというとベンジー。
誰が何と言おうとヒロインはベンジーだ
シンジケート
今作の敵は世界各国の生死不明となった諜報員が集結した犯罪組織「シンジケート」。
少年漫画だったらワクワクする設定を持つ組織の登場に少年ハートがくすぐられたのは僕だけではないだろう。
実在しないとすらされる謎の犯罪組織、このそれっぽく格の高い敵はローグ・ネイションの見どころの一つだ。
組織のトップに立つソロモン・レーンも面白い、
貫禄ある佇まいや駒を動かし極力自分を盤上に立たせないイーサンとは対照的なやり口など強烈に印象に残るそのキャラクターは前述のイルサに比肩する存在でありローグ・ネイションの紛れもない魅力の一つであると言えるだろう。
仲間への情に厚く滅茶苦茶体を張るイーサンと非情に徹する冷酷で狡猾なレーンの対比と二人のせめぎあいは絆を紡いでいくイーサンとイルサの関係描写とはまた違った良さがあった。
国家や組織に使い潰されたスパイという存在が行きつく、ある意味でイーサンにとってのイフと言える存在だったかもしれないと思うと面白いキャラだ。
だがしかし、ボスはインパクトがあるし組織の設定や実績も申し分の無いシンジケートではあるが、本編内で描かれた構成員たちの強さがこの格の高い組織に見合っていないように感じたのが個人的には残念なポイントである。
イーサンを苦しめるくらい強い!みたいなレベルの敵がほぼいなかったのが惜しくて惜しくて。
そのほとんどがイーサンとイルサによっていつもの敵モブみたいにあっさり処理されてしまうので組織としての厚みを正直感じづらいところがあった。
限られた時間の中で組織を膨らませようとすると尺不足になるのは明らかなのでまあしょうがないとは思うのだが凄く良い設定の組織なだけにもっともっとイーサンを苦しめて欲しかったというのが個人的な感想である。
多分一番イーサンを苦しめたのは水。
描かれていないところでの実績の数々がヤバすぎておいシンジケートお前らもっとやれたんじゃ?っなっちゃった
アクション・狂
そしてM:Iでやっぱり欠かせないのがアクション。
離陸ししっかり飛んでる軍用飛行機に生身でしがみつくという狂気のアクションは公開から何年も経過した現在でもなお語り草となっている伝説だ。
観ていない人にとっては映画の終盤でお出しされるトム・クルーズ最大の見せ場だと思うだろう。
まさかの冒頭。
まさかのOP前。
いきなり伝説級の危険なアクションから幕を開けるのがこのローグ・ネイションだ。
トム・クルーズはゴースト・プロトコルで完全に狂ったに違いない。
しかしこれが実に効果的で観ている者はのっけから度肝を抜かれ惹きつけられる。
畳みかけるように起こるシンジケートの暗躍、イーサンの孤立というドラマに混ぜるようにオペラの舞台裏ギミックや小物を駆使した静かな見ごたえあるアクション。
6分近く息を止めて行われた潜水アクション(流石のトム・クルーズも疲労困憊だったらしい)。
街中で車をぶん回した直後にバカみたいなスピードでハイウェイを駆け抜けるちょっとでもミスったら死ぬしかなさそうなバイクチェイスととんでもないものを連続で浴びせに来る。
ストーリーを楽しむどころではない。
トム・クルーズの命を心配するフェーズに入るレベルでアクションが突っ走っている。
もう誰もトムを止められないのかもしれない。
だがバイクアクションの迫力は本当に凄まじくバイクチェイスシーンは映画史に刻まれる最高峰のクオリティであるだろう。
個人的にはあのM:I-2を超えたと思っている。
とにかくアクションで加速し続け観客についてこい!!と全力疾走し続ける今作はもうアトラクションみたいなものと思ってもいい。
映画のストーリーを忘れたとしてもこの数々の狂ったアクションだけは刻まれることだろう。
ただこのアクションが終盤には失速…というと言い方が悪いが中盤までの派手で客を沸かせるのに長けたものから落ち着いたスパイアクションへとシフトしていくのだが個人的にはこの熱から冷へと下がっていくような温度差を感じさせる落ち着き方が結構好みで、賛否の別れそうな決着のつけ方も冒頭の韻を踏みつつもスパイらしさを思わせる静かなそれで大変良い。
ただまあ記憶に残るのは中盤までの派手なアクションばかりで、終盤のことをちゃんと記憶に残している人は少数な気がする。
派手派手に突っ走ったくせにしっとりとした終わり方をするこの心地よい温度差、忘れた人はもう一度改めて、観ていない人はこれからその辺に注目して観て欲しい。