御存知トム・クルーズ主演スパイアクション第4弾。
3から約5年の期間を経て公開された本作。
(正直当時は3で完結したと思っていた。)
個人的にではあるがM:Iシリーズ最高傑作だと思っている。
今回はそんなゴースト・プロトコルについてちょろっと書いていこうと思う。
トム・クルーズ復活
ファイルの奪取という簡単な任務が失敗、イーサンを招集し事態収拾を図るもどんどんと悪化していく状況、明らかになる敵の目的と正体。
どんどんスケールのデカい事態へと急加速する中ゴーストプロトコルが発動しIMFが解体、限られた装備と人員、組織のバックアップもなし、現地警察からは敵視という環境で核ミサイル発射を阻止するための戦いへとイーサン達が身を投じることになる今作。
核発射を阻止すべく奔走するというストーリー自体はアクション映画あるあるなシチュエーションだが今作はそこにスパイ要素、イーサンのアクション、チームプレイなどM:Iシリーズが積み上げてきたものを総動員、更には冤罪で追われながら自身もまた真の敵を追いかける緊迫感のあるストーリーラインなど1への原点回帰を意識したようなものが盛り込まれ4作目にしてミッション:インポッシブルというシリーズの一つの到達点に辿り着いたかのような内容だ。
3でジュリアを救った後イーサンはどうなったのかを描いた後日談でありつつ続編のローグ・ネイション、フォールアウトへと連なる新シリーズ一本目の顔も持っている。
これまで1、2、3と繋がりの乏しい独立した物語が展開されたシリーズにとって前作・続編との連続性が意識されていることは大きな変化だろう。
肝心のアクションは2や3のように派手な銃撃戦があるわけではないがトム・クルーズの頭がしっかりイカレていることがわかるくらいにスリリングかつスパイ映画らしさを損なわないこだわりのアクションが用意されており視覚的な満足度はかなり高い。
また、敵であるヘンドリクスも経歴が特殊かつ思想が極端にぶっ飛んだ面白キャラでこちらの動きも面白い。
荒唐無稽で破滅的な思想を持つもののそれが人類という種に大きな意味があると本気で信じ実行しようという狂気のキャラで個人的に結構好き。
イーサン相手に張り合う粘り強さや終盤の一跳びなどその意地を感じる執念にこの男の信念を感じるので是非着目して欲しい。
イーサン達味方サイドが光っているので埋もれそうになるがなかなかいい立ち回りをしてくれた。
立ちはだかる敵の特異さ強大さはアクション映画で重要なポイントだと思うので今作はここもきちんとクリアしている優等生だ。
また、スパイとして在り続けたイーサン・ハントの生き方に一つの答えを示すような結末は今作が完結作でも納得できるような、それでいて新章の幕開けを予感させるような美しい着地だった。
今作でイーサン・ハントというキャラにより深みが加わったと思う。
総合的には1~3の良い部分を纏めてぶち込みながらそれをブラッシュアップした内容に仕上がっておりかなりクオリティの高いスパイアクションムービーといえるだろう。
当時トム・クルーズの人気が低迷、更にはヒット作がなかなか出せなかったこともあり(ナイト&デイ好きだったけどなあ)「別の俳優が主演に起用されるのでは?」なんて不穏な噂も流れたのが嘘のような完成度と満足感を与えてくれた。
そんなこんなで今作はミッション:インポッシブルシリーズの新しい幕開け、そしてトム・クルーズ完全復活の象徴と言える一本だろう。
チームプレイの最高地点
今作はイーサン・ハントだけじゃない。
いつの間にか現場入りを果たしたコミカル要因ベンジー、戦闘力高めなかっこよすぎる女ジェーン、なんか勢いで現場入りする羽目になってしまった分析官ブラント、今作のチームメンバーも個性豊かにそれぞれ尖った活躍を見せてくれる。
特に個人的にお気に入りなのがジェレミー・レナー演じるブラントだ。
分析官とは思えない動き、ジェレミー・レナーという存在感の大きい役者、キレのあるアクションなど総合的なキャラクターとしての魅力がイーサン・ハントという存在に負けないくらいにフックがある。
シリーズ全体の主役がイーサン・ハントであるならゴースト・プロトコルはこのブラントが裏の主役といってもいいくらいのキャラクターだ。
裏方要員と思われていたのに滅茶苦茶動けるヤツだと認識された途端イーサン並みに危ないことをさせられる可哀想な男でもある。
「やりたくねえ~やらなきゃいけないのはわかるけどいやだ~」という気持ちが滲んでいるかのような悪あがきストレッチシーンはジェレミー・レナーファン必見の可愛さ。
イーサンにそれくらいやれるだろと言わんばかりに「飛べ」と何度も煽られる場面は可哀想すぎて何度見ても笑える名シーンだ。
何故これほど戦える男が分析官に転向したのか、彼の抱える心の傷、苦悩、イーサンとの共闘を重ねる果てに救いと答えを与える物語にもなっており彼無しでこの映画は語れないだろう。
コミカルとシリアスどちらもバランスよく請け負い、そのキャラ造詣で彩りを与えてくれた彼の存在はゴースト・プロトコルを傑作足らしめた一要因と個人的には思っている。
ブラントに加えベンジー、ジェーンもそれぞれイーサンという強すぎる存在に埋もれることなく魅力ある動きをしてくれた。
現場慣れしていない素人感がにじみ出るベンジーはヒヤヒヤ感とユーモアを与えシリアスになりすぎないように、ジェーンは復讐心とその鍛えられた肉体でシリアスと色気をくれた。
それぞれがミッションの中でそれぞれの個性を存分に活かし印象に残る活躍をしてくれた。
これは今作がチームプレイを中心に描いていたからこそだろう。
3に引き続いてチームプレイを強調した今作だが3の時以上にそれを意識している印象を受ける。
今作は3以上にイーサンの独壇場にはさせない、一人ではどうにもできないようなシチュエーションが多い。
限られた装備、バックアップも無い、そんな状況下で困難にチーム全体で立ち向かう。
その中でキャラ一人一人の掘り下げがキレイにテンポ良く映し出されるのだがこれが観ていてとても気持ち良い。
ブラント、ベンジー、ジェーンがサポートすることでやっとイーサンというカードが機能するような流れが作られているので「もうイーサン一人で良くない?」という気持ちには最後までなることはない。
3で作られたチームプレイの基盤はこのゴーストプロトコルで最高地点に辿り着いたと個人的には思う。
アクション・極
そして触れざるを得ないのがアクションだ。
1の水槽爆破や垂直降下、2のロッククライミングやあと数センチで失明しかねないナイフアクションなど前から「頭おかしいことやってんな」と思わせるくらいには中々危ないことをやっていたM:I。
今作ではさらに向こうへ、プルスウルトラになってしまったトム・クルーズが大暴走。
「CG…だよな…?CGであってくれ!」と祈りたくなるくらいに危険なアクションを喜々として披露してくれた。
自分でスタントをするいつものこだわりは当然、心配するプロデューサーたちを置き去りに「楽しいからやるんだ」と豪語するイカれたスター、トム・クルーズ。
今回は世界一高いドバイのブルジュ・ハリファの側面をスパイダーマンのようによじ登る、そして帰り道はロープを伝って側面を駆け降りる、飛ぶ、当時48歳とは思えない頭のネジをどこに捨ててしまったのか常軌を逸した命がけの危険なアクションはその甲斐あって見た者の脳に焼き付く迫力があった。
映画の中身をよく覚えてなくてもこのシーンはまず忘れることはないだろう。
「トム・クルーズ=頭おかしい」というフレーズと共に永久保存されるはずだ。
以降のローグ・ネイション、フォールアウトでもかなりヤバいアクションを連発するようになったのって今作でアドレナリンですぎて狂ったんじゃないかと密かに思ってたりする。
しまいには本物の宇宙空間で宇宙服無しで遊泳とかやりかねない。
とにかく今作のアクションはトム・クルーズという男のヤバさ・凄さをファンに突き付け知らしめた一本だろう。
トム・クルーズここに在り!!