怪獣×ロボット=最強 パシフィック・リム(2013) 

ジプシー・デンジャー 映画

御存知ギレルモ・デルトロ監督が贈るロボット×怪獣SFアクション

好きと好きを掛け算したらそりゃ当然大好きなモンが出てくるよな
出てきちゃったね!という映画

パシフィック・リムとは?

「敵はデカい怪獣!?じゃあこっちはデカいロボットだ!!」
目の前の深刻な問題に対し随分シンプルかつわかりやすい結論を人類は弾き出した。
最高じゃあないッスか…

劇中における怪獣の呼称はモンスターでも横文字の何かしらでもなくそのまんま「KAIJYU(怪獣)」

日本のアニメ、特撮を愛するデルトロ監督の趣味が色濃く反映されているというか原液そのままであることがこの単語からだけでも感じ取れる。

そう、この映画は監督の「好き」が前面に押し出されたオタクによるオタクのための特盛映画なのである。

人類と怪獣、日常と終末

今作は怪獣という存在が人々に認知された状態からはじまっている。
初代ゴジラや多くのモンスターパニック映画のように未知との遭遇を描くところから始まらない。


イェーガーのパイロットは英雄視されアイドルやスターの如く持て囃されてるわ怪獣との戦闘を間近で動画撮影する命知らずもいるわイェーガーや怪獣のフィギュアなんかも出ちゃってたりするわ怪獣の部位が闇市を賑わせていたりするわ怪獣対策のために多くの雇用が生まれたりするわと「人類を脅かす外敵との戦争」そのものががこの世界ではある種コンテンツとして消費されていたりなんかして人間社会の逞しさがきっちり描かれている。

一方で人類を守る防護壁「命の壁」が難なく怪獣によって破壊される光景がニュースで流されたりもしているのでそれなりに人類が劣勢にあることはこの世界に生きる人々も薄っすら感じているのではないだろうか。

だからといって何ができるわけでもなく成り行きに任せるしかないそんな諦めたような感情を持って人々は生きているのかもしれない。

日常と終末が同居し、そして確実に世界の終わりへと向かい続ける道

その最端部を切り取ったのがこの映画パシフィック・リムだ。

怪獣

強い

とにかく強い!

もう勘弁してくれってくらい強い!!

硬いはずのイェーガーの装甲をそんな簡単に引っぺがすな
絶望しちゃうでしょうが

こいつらが強く描かれれば描かれるほどに終末感が増していくし立ち向かうローリーら主人公たちのカッコよさも際立つ。
ホントいい仕事するよこいつら

海中や海上を移動する姿がよく描かれたり、大きさのカテゴリーをどこかの誰かの名前を思い浮かべそうな「セリザワスケール」という基準でわけたりなどゴジラリスペクトが怪獣周りの設定や描写に散りばめられている

彼らもまた監督の「好き」が詰め込まれた主人公のひとりなのである

そして欠かせないもう一角の存在

イェーガー

二人で乗りこみ!
全身で動かす!!
ぶん殴る!!

荒れた海上をずんずん突き進み怪獣を殴ってぶん投げるとにかくパワフルな動きにはスマートさの欠片もない。

だがそれがいい

踏み出す一歩、振動する大地から伝わるイェーガーの重厚感
翻弄され揺れるコクピットと歯を食いしばり踏みとどまるパイロット
怪獣に叩きつける拳の重さ
全てが今ここが人類存亡をかけた最前線なんだという説得力を与えてくれる

ジプシー・デンジャー、カッコよすぎるんだよなぁ


「こういうの好きだろ?俺も好きさ!」
監督がニコニコ顔でそんなことを言ってる気さえしてくる
言ってないけど(多分)

人間ドラマ

怪獣とロボットの二本柱を通して人間ドラマも展開される。
説明は言葉少なく、考えるな感じろという塩梅ではあるもののそれがいい味を出していると思う

トラウマを乗り越え立ち上がるドラマを用意されたローリーとマコを除けば他のキャラの経歴や動機はほぼ説明がないに等しいがそれぞれの何気ない言動からキャラクターそれぞれにしっかりとした個性があり映画のテンポや主軸である「怪獣VSロボット」を損なわないための取捨選択が制作の過程で行われたであろうことが想像できる。

それでもちゃんと好きになってしまう魅力的な動きをするんですこいつら。

チャック・ハンセン
推しのチャック。愛犬家、そして喧嘩は弱い

というかチャックとハークに泣かされました

総評


怪獣とロボットのプロレスをベースに絶妙なバランスで人間ドラマが味付けされた名作SF映画。


怪獣とロボットのデザインや設定は作りこみがしっかりしており監督の愛の深さが感じられる。

日本のアニメ特撮コンテンツがデルトロ監督に大きな影響を与え、それによって国内では見られないような上質で贅沢な映画が作られたことが非常に嬉しい。


しかも日本のアニメ特撮の影響は多分にあるものの単なる日本作品の模倣品などではなく新しいオリジナルを生み出したことが本当に素晴らしい…
何度でも見れる。

ロボットにも怪獣にも興味ないよっていう人には薄味かもしれないのでおススメはできないけどどっちかでも好きなら一度は見てほしい一本。

あとロボットアニメ感マシマシキャスティングが為された吹き替え版も面白いんでおすすめ。
個人的には古谷徹さんが突然アムロ・レイになる瞬間が好き。

ニュートンとハーク
ハーク(CV.池田秀一)に唐突に暴言を吐くニュートン(CV.古谷徹)

そいつはシャアじゃないよ古谷さん!

続編について

今作の正当続編として『パシフィック・リム : アップライジング』が2018年に制作されたが評価は賛否両論。

続投するはずだったデルトロ監督が降板した影響か「ロボットVS怪獣」に対するアプローチがかなりの別物。

ロボットの重厚感を重視した一作目に反してアップライジングのイェーガーは動きが早くアクションがスタイリッシュ。

また、夜の海や街、海底など比較的暗い場所での戦闘が多かったのに対し明るい場所での戦闘が多めであるなど視覚面で受け取る印象がかなり異なっており全体的に1に比べ大衆向けを意識した作りになっている。

前作の尖っていた部分が削り落とされてしまったので個人的には残念だった。

一作目への思い入れが強い人ほど受け入れるのが難しく、別物に感じると思っていい。


とはいえアニメ小ネタは散りばめられているし前作キャラのその後も見れるしと観客を引き付けようとする意欲は感じられる(それが正解だったかどうかは意見が割れるだろうが)ので少しでも続きが気なるなと思ったら自分の目で確かめるのがいいと思う。

3もあるかもしれんしね!(なおデルトロ監督は復帰を否定している模様)

二作目の情報が出たころレジェンダリー版ゴジラVSパシフィック・リムの噂が流れたよなあ…
観たかったなあ

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