ラモット (HUNTER×HUNTER)について

ラモット 漫画

「ゴミども、それはオレのだ」

キメラ=アント編にて登場したキメラ=アントの兵隊蟻。
ゴンとキルアにとって初めて戦闘した蟻でありキメラ=アントの生物としてのスペックの高さを二人と読者に突きつけるような役割を持っていた存在でもある。

ただの兵隊蟻のくせに妙に印象に残るそんな男、ラモットについて。

人間の肉体をベースにウサギと鳥のパーツが備わったような外見のキメラ=アント。
性格はかなり短気で直情型。

コルト隊に所属していながら規律を重んじるコルトの方針に反発し念能力を会得した時には自分が王にすらなれるなどという分不相応にも程がある思い上がりをするなどかなり調子に乗った一面が見られた一方でネフェルピトーのオーラに触れた途端尻尾を振って忠誠を誓う姿も見られなんとも野生動物らしく本能や直感に従い生きており小物感が否めないところであるがちゃんと自他の力量を見極めることができているということでもあるのであながちバカにも出来ない(かもしれない)。

ただ、覚醒したキルアに怯える自分を認めることができず逃げることなく立ち尽くしてしまいあっさりと殺害されてしまった。

肝心なところで野生の本能に従えない余計なプライドを持っていたが故に退場となってしまったわけだが、ヒトと混じったからこそ手に入れた強さではあるがヒトと混じってしまったからこそ芽生えてしまったプライドのせいで死んでしまったととれなくもない。

そう考えるとなんとも皮肉である。
(仮に逃げたとしてもキルアが危険な蟻をみすみす見逃すわけはないのでどのみち死んでいただろうけど)

師団長達の多くは経験値で勝るハンター達に脅かされてピトーら護衛軍の下に命からがら戻り忠誠を誓うことで能力を授かりその下で働くことになったわけでラモットもキルアに遭遇していなければ、もしくはキルアから逃げることができていれば師団長達と同じようにシャウアプフから能力を授かることができていたのかもしれないが…

まあテンション高めの面白シーンをたくさん見せてくれたので良い派手な死にっぷりで気持ちいいなと個人的には思っている。

2000年 キメラ=アントとしての生を受けコルト隊の兵隊蟻となる。

NGLに潜入したゴン・キルア・カイトと接触。
ゴンとキルアを相手にするも二人のコンビネーションの前に敗走

ゴンとキルアの念による攻撃を受けたことで精孔が開きラモット自身も念能力に覚醒

念に覚醒したことでより強気になり自身が王になる野望を抱くもネフェルピトーのオーラに触れ一瞬で自身の浅はかさを悟りピトーや王のために自身の能力を行使する運命にあることを悟る。

王が産まれ巣からいなくなったこと、女王が生殖能力を失ったことにより師団長達がそれぞれ自分達の国を作るための独立を画策。
その流れに乗じてラモットも巣からその姿を消す。

ドーリ市近郊の森でゴンを陰から護衛していたキルアと遭遇。
怯えるキルアを一方的に攻撃しトドメを刺そうとするも頭に埋め込まれていたイルミの針を取り覚醒したキルアにその首をもぎ取られ死亡

生きて護衛軍の下に逃げ込むことができていたらハギャ達のようにいい感じの能力を手に入れることができただろうに…相手がキルアだからしょうがない。
むしろ健闘した方である。

「アタマノコシテーシタハクッテー」

強化系能力者
能力名: 不明

攻撃手段は拳や脚、さらには翼による打撃、また念覚醒後は翼の中から刃を出して斬りつける戦法も見せており戦い方になかなかバリュエーションがある。

さらに、完璧に気配を絶ちカイト達への接近を成功させたりG.I.での修行を乗り越え基礎能力が大幅に向上しているはずのゴンとキルアを苦戦させるどころかキルアの電撃とゴンのジャジャン拳を受けても口が聞けるレベルに元気でいられるタフネスを誇ったりと念能力に覚醒するよりも前から生物としてのスペックの高さを感じさせる描写が見られる。

一応その後血反吐を吐きまくる瀕死の状態となるが精孔が開き念能力に覚醒し、すぐにオーラの扱い方を理解し始めるなど念能力者としての才能も高かったと思われる。
まあ念に目覚めるキメラ=アントは大体そんな感じだったけど。

イルミの針の影響とはいえあのキルアを萎縮させ一時一方的に殴りまくり泣かすなどHUNTER×HUNTER史上初の光景を見せる衝撃の活躍もしてくれた。

念能力を扱えるものの発を見せる場面は無く、キルアを痛めつけることに執着しすぎて使わなかったか、もしくは何も無かったのかの二択かと思われる。
ウイングが言う通り強化系能力者には必殺技の類は必要がなくオーラを纏った肉体で攻撃しまくっていればそれが十分な脅威なのでラモットもそれで満足していた可能性は高いかなと思う。

ヂートゥのように念の奥深さを思い知る機会に恵まれなかったことは不運と言えるだろう。
よりにもよってキルアと遭遇しちゃうとか…

修行をすることもなかっただろうし本当に生物として生まれ持った才能だけであそこまでやれたのだとするとまあなかなか頑張った方だろう。

ちゃんと何かしらの能力を手にしていたら何かが変わった…と思わなくもないがヂートゥがそうだったように結局うまいこと能力を使いこなせないまま頭を砕かれてジ・エンドになっていたんじゃないかなと個人的には思う。

ラモットの評価が難しい原因となっているのがゴンとキルアである。
この二人のおかげでなんかラモットが相対的に強く印象づくこととなってしまっているのだ。

ラモットがゴンとキルアを相手にのやったことを簡単に並べると以下の通りになる。

・ゴン・キルア・カイトの3人を相手に悟られることなく接近
・ゴン・キルアとの間合いを一瞬で詰め二人同時に攻撃をヒットさせる。
・ゴンとキルアを相手にしながら乱打戦で負けないどころか苦戦させる。
・ゲンスルーすら気絶させたジャジャン拳(グー)を受けても倒すことのできないタフネス。(しかも念不使用)
・ノブナガ、シュート、ピトーなど強敵クラスにしか発動しなかったイルミの針が反応しキルアを怯ませる。

その功績を並べてみてももう幻影旅団とかその辺のバケモンの所業にしか見えない。
これが兵隊蟻とかなんの冗談だ。

特に下二つが問題だろう。
ゲンスルーを屈服させるあのジャジャン拳を念によるガードもせずに受けて元気に叫びまくれると言うこいつの能力の高さはキメラ=アントの中でも相当高い部類なのではと思わせるほど。

ここにあのキルアをガタガタ震えさせた描写が重なってくるともうとんでもない強敵にしか見えない。

…が、個人的には「いやそんなバカな」と言う感情が渦巻く。

確かにラモットはそれなりに才能はあっただろう。
けれどキルアがあれほどまでに怯える相手=旅団やイルミのような超強敵クラスに該当するのかというとそれはまた違うだろう。

まずジャジャン拳を耐えた点についてだが、これはおそらくラモット戦時のゴンのギアがMAXに入っていなかったこと、そしてジャジャン拳を撃つ際に練り上げたオーラが不十分だったことが大きいと思われる。

G.I.内のビスケからゴンとキルアの二人は「経験不足ゆえにギアの上げ方を知らない、死に直面することで自分達の全力を引き出すことができた」と評されている。
またカイトからも戦闘体制に入ってからオーラが力強くなったこと、さらにゴンの方はスロースターターであることが指摘されている

このことから、G.I.内でのいくつかの実戦を経てそこそこマシになっている可能性はあるものの、NGL潜入時点ではカイト目線ではゴンのギアの入れ方はまだまだ改善の余地があったと考えられる。

つまり初遭遇するキメラ=アントであるラモットを前にした時点ではゴン達のギアが入り切っておらず苦戦したということだ。

また、キルアに合わせた連携攻撃をする以上レイザー戦の時のようにとんでもない量のオーラを練りあげる隙がなかったことなどもこのギアの不十分さと絡みあいラモットに向けて放たれたジャジャン拳がそれまで描かれていたものに比べると劣る威力であった可能性が高いということも考えられる。

とはいえそんなジャジャン拳でもその辺の野生動物を倒す程度ならオーバーキルすぎるほどの威力であることは間違いないしそんなものをオーラによる防御もせずに耐え切ったということ自体は恐るべき事実であることに違いはないのであるが。

ジャジャン拳被害者
ジャジャン拳を受けた面子を並べてみると念のガードなしで受けて気絶もしなければ口も普通にきける状態で済んだラモットの異常さがわかる。

そしてイルミの針が反応したことについてだがこれはキルアの精神状態が大きな原因でありラモットの実力そのものが直接の原因ではないと考えられる。

ラモット戦に限らず直近のシュート戦でもイルミの針は過剰に反応しておりキルアの思うような戦いができずにいたことが描写されている。

これはシュート戦前にビスケによって指摘された自身の弱点とそれが引き起こすであろう「いつかゴンを見殺しにする」という結果を予言されたことがキルアにかなりの精神的な影響を与えていたと思われる。

これはただビスケが指摘したからだけではなく、NGLでカイトを置き去りにして撤退したという事実があるからこそビスケによって改めてわかりやすく言語化された弱点が重くキルアにのしかかったのだろう。
(ピトーが眼前にいる状況に直面したら暴走するゴンを黙らせてカイトに任せて逃げる以外の行動をとっても全滅しかなかっただろうしあの判断自体は正しいと思うが)

つまり「カイトを置いて逃げたこと」「保身のためにいつか友達すらも見殺しにする未来の可能性を指摘されたこと」、この二つが相互に作用してキルアの精神に負荷を与えていたのではないかと考えられるということである。

ビスケによって突きつけられた克服すべき弱点、そしてシュートに負けたらゴンの前から姿を消さなくてはならない状況、それらを自覚した上で臨んだはずの戦いでキルアは呪縛を克服するどころか屈服してしまう。
これはキルアにとって大きなショックを与えたことだろう。

呪縛を克服することもシュートに勝つことも叶わなかったという惨敗の結果、そしてゴンの下を去らなくてはならないという直面した現実にキルアの精神はかなり不安定になっていたと考えられる。

そもそもシュートに負けてからのキルアは兵隊蟻に遭遇した時のことを異様に恐れていたりと様子がおかしい。

NGLでハギャ隊をボコボコにしていた時のような強者オーラは微塵も感じられず一般市民が襲われている隙に逃走することすら視野に入れている逃げごしっぷりだ。

いくらゴンが念を使えない無防備な状態だったとしても平常時のキルアであればもっと強気の姿勢だったのではないだろうか。
精神的に明らかに弱っていたと言えるだろう。
そんな不安定な時にやってきたのが我らがラモットだ。

キルアにとってピトー以来の遭遇となるキメラ=アント。
キルアの脳裏にはあの苦い敗走がよぎったはず。
ピトーという存在に触れたことで肥大化した蟻へのイメージが元々不安定だった精神状態のキルアをさらに追い詰めイルミの針の効果を発動させてしまったとも捉えることができる。

それによって生まれたのが調子に乗り絶頂アヘ顔で攻撃を繰り出すラモットと泣きながらガタガタ震えてるキルアという嘘みたいな光景である。

つまりキルアの実力がラモットより劣っているからではなくあの時点のキルアがおかしかっただけである。

加えていうならビスケが指摘した「敵のMAXを測ろうとする。そして常に最悪の場合を想定して戦う」という悪癖がまさに災いし、蟻=ピトーくらいのビビり方をしていた可能性が大きい。

まああとはラモットと戦った時攻撃が効いていないように見えていたというのもまた敵のイメージを大きく膨らませる一因だったかもしれない。
(実際には帰宅後吐きながら苦しむラモットくんだったんだけどそんなことキルアは知る由もないという)

キルアがイルミの針を取り除いた直後ラモットを瞬殺していることから両者の本来の力量の差はかなり開いていたはずであり別に特別ラモットがすごく強かったわけではない。

キルアとラモット
急にキルアが強くなったわけではなくて元々あれくらいの実力差があっただけという話。画像の数値はあくまでイメージ、つまり適当。

ゴンのジャジャン拳がフルパワーで発揮されていれば初登場時点でラモット退場の可能性は十二分にあったしキルアのメンタルが弱っていなければそもそもあそこまで一方的に殴られることもなくラモットを瞬殺していただろう。

結局のところ強くなる可能性はすごくあったけどそうはなれなかった悲しき兵隊蟻という評価にとどまる。
お前にヂートゥくらいの逃げ足があればな…
そのヂートゥもアレなんだけど…

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