-この世界に 祈る神など存在しない-
気になっていたけど日和って見てなかった映画『邪悪なるもの』、遂に観ました。
いやなんかグロそうだししんどそうだしで体力気力十分な時じゃないとやばいかもなと思って後回しにしてたらこんなスーパー周回遅れを決め込む羽目になってしまっただけなんだけどさ。
ハイ傑作!面白かった!!
大変良かったです!!
作中で起きたことは何一つとして良くはないけど!
端的に言えば地獄。
正直救いの無さや苦味で勝負されるより凡百のハッピーエンドの方を高く評価したい信条の僕としてはこの手の見るからに救いの無さそうな作品ってかなり身構えてしまうところなのだけれど本作の地獄っぷりがとにかく素晴らしくこれには呑まれましたね。
絶対に碌な結末を迎えることは無いと覚悟を決めながら観ている人間も更に一段下へ引き摺り込むような力を持った見事なまでの地獄で。
悪魔憑きパンデミックの勢いの凄さと人間の愚かさのコンボで長閑な町が一晩で地獄へと変貌していく様は圧巻。
悪魔憑きとは縁遠い寂れた田舎が舞台なこともあり悪魔憑きが出たこと自体に懐疑的で行動がすっとろい奴や言葉が少なく自分中心行動が先行しすぎて反感を買ったり裏目に出たりする奴土地に執着し周りが被る迷惑も考えずやってはいけない行動をガンガン取って事態の引き金を引いた奴など色んな人間が色んな形で事態を悪化させ最終的には取り返しのつかないことになってしまうという、1時間半でわかる人間と悪魔の地獄ビルドコラボ!!
パッと思い出せる作品としては『28週後…』なんかでも人間の良かれと思ってとった行動が連鎖的に地獄を拡大させていく様子が観測できたけど本作で展開されるそれははもっと酷い(褒めてます)。
破ってはいけない7つのルールが観客に開示された時点で主人公ペドロを初め登場人物らがすでに半分くらいルールぶち破ってて「もうあかん!!!」と呆れ返ってしまうくらいには人間が碌でもない行動ばかりとる!!
そこに真っ直ぐストレートにかましてくるゴア描写まで加わるので笑いゼロのモノホン地獄が完成というね。
ゴアに関して言えば実際のとこそこまで見てらんねえとなるほどキツいものでは無い。
しかし犬に顔面いかれる女の子とか自分の子供の脳みそをポップコーンみたいに手で何度もかき分けつつ歩き食いしてる母親とかお腹に赤ちゃんがいるのに顔面に自分で斧を叩きつけて自殺する母親とかその登場人物の属性とか背景込みで見ると精神的にドッと疲労感に襲われるようなものが多くて笑って誤魔化すこともできない。
そう。ギャグが一ミリも無い(超重要)。
大体ホラーというと(全部が全部そうというわけでは無いけど)子供は絶対助かるというわけでは無いけど大人より優先的に死んでいくことはない。
犬などの動物も子供や主人公を守ってくれたり観客に癒しを与えてくれる役割が多い、というざっくりとした思い込みと決めつけをしていたものだから「犬が子供の顔面に噛み付く」というこちらが勝手に作っていた決めつけ(ルール)をダブルで破壊してくるもんだからド肝抜かれちゃった。
しかも「まず動物がおかしくなる」とか「子供が感染しやすい」とか容赦無く弱いところから攻め落としていくとかそんなんガチで勝ちにきてる奴じゃないですか悪魔さん。
勘弁してくださいよ。
悪魔がゾンビもののように感染形式で増えていくのは『REC』シリーズなんかでも観たけど動物が服の匂いを嗅いだだけで感染するとか肉親の情を利用したりとか自分たちに対抗し得る処理人を人間を操って始末させたりだとかこっちの方が余程タチが悪い。
そしてこんなにもやばい事象なのに人間サイドの動きが緩慢でどこか現実味のない他人事のようにしているのもどこかリアルで、まあでもこんなもんだろうなとも。
対処するためのルールもあれば対処できる人員もいる。
全員一丸となって事態にあたればどうにかできないこともないはず。
でもそんな上手いことなんかいかない。
人間ってこうだからさ!
人に降りかかる迷惑を見ないふりして自分たちさえ良ければいいと人の土地に悪魔憑きを捨てるのも、見たことがないからと悪魔憑きの出現を信じないのも、ちゃんと説明しないのも人の話を聞かないのも、まあしゃーない!こんなもんよな!!と厭な納得を得てしまったよ。
だから滅びた…
これ面白いのはみんな対悪魔憑きのルールを理解していたのにその上であんなことになっちゃってたこと。
特に愚か者代表みたいに動いてたペドロなんかお前本当に主人公か!?ってくらい碌でもないルートを走りまくる。
村から全てを置いて脱出しようとしてたのに悪魔憑き捨てる悪手に加担しちゃったり捨てなくちゃいけない衣服を大事な息子が住んでいる元嫁の家に持ち込んで大惨事引き起こしたりちゃんと丁寧に説明すれば耳を傾けてくれるかもしれないのに過度に怒鳴り散らして反感を買ったり全然説明不足だったり話聞かなかったり指示に従わなかったりもう気持ちいくらい彼の選択の何もかもが事態を悪い方向に引っ張っていってもはや天災という他ない。
でもまあこうなるかもな!!だって人間だもの!!
どうしてそこでそんなことを!?と思うような行動がたくさんあるんだけどああいう状況下で恐怖を制して冷静かつ完璧にこなせる人間はまずいない。
恐怖に精神を囚われた人間にはルールなんて守る余裕もなくなる。
ましてや主人公たちはエクソシストでもなければヒーローでもないただの一般市民。
ペドロやルイスの訳のわからない行動の連続はもう正気を保てず恐怖で混乱状態だったからなのだろう。
窮地に立たされて守るべきものを背負ったところで都合よく世界を救えるようになるわけでもなく現実はただ非情。
何の力も無い一般市民の視点から地獄が生まれていく過程を見せられるだけの映画。
派手な爆発も銃声や戦闘音がけたたましく鳴り響くことなく静かに地獄が広がる様子が、ただ皆殺しにされればどれだけマシだったかと思わずにはいられないくらいに突きつけてくる残酷さが、これほどまでに美しいと感じるのは僕自身があの世界の恐怖に呑み込まれてしまったからだろうか。
何も解決していないのに朝日が昇り、罪を洗い流すこともできないシャワーを浴び、終わったはずの世界に日常を過ごそうとするその姿に「でももうどうしようもないよな」と観ているこちらもただ諦めの視線を投げかけるしかできない。
そしてただでさえ絶望に浸されているところに最後の一押しのようにペドロと観客に注がれる「血の塊と髪の毛」の一撃。
本当に容赦が無い。
まあでも…なんか面白かったよな…
ここまで地獄だといっそ。
愚かな人間描写も、悪魔の怖さも、田舎の風景の美しさも、めちゃくちゃグロいってわけでもないのに精神を蝕んでくるような粘度高めのゴアも全てが重なって出来上がった至高の芸術的な地獄でしたわ。
いや本当に素晴らしい。
EDで流れる曲まで含めて最高品質の地獄。
ひれ伏しました!
続編も制作予定とのことだけど何をどうするのだろう。
前日譚だったりペドロがいなくなった後町では何が起こっていたのか?とか全く関係ない土地での惨劇でもあそこからの直接的な続編でもいくらでも観たい部分はあるが…
正直続編無しでこれで終わったって良いくらい綺麗に終わってるから別に続編とかなくても良くない?という気持ちもあったり。
まあそわそわしながら待つことにしましょうかね。
