レベル100放送事故 悪魔と夜ふかし(2023) 感想

悪魔と夜ふかし 映画

-テレビ史上最恐の放送事故。-

一文でまとめると「生放送中に大変なことが起きちゃった!」というホラー映画。

その生放送当時の映像を見せられるだけのつまりはファウンド・フッテージホラーなんだけどこれが結構面白かった。

ただこの映画を面白いとか好きとか肯定的に感じられるかどうかはかなり人を選ぶ作品だなと思う。

というのも70年代の架空のテレビ番組の生放送をそのまま垂れ流す(舞台裏のやりとりとかも挟み込まれているけど)形式なので司会者兼主人公のジャックの面白いのかどうかもよくわからない小粋で軽快なジョークや海外っぽさがあるものの日本人からすれば馴染みの薄い空気感のトークをひたすら見せられるのでこの辺の空気感を楽しめない人は早々に振るいにかけられて脱落するだろうなと。

僕はこの辺のレトロな空気感作りがすごく刺さって楽しくなっちゃったので多分相性が良かったのだろう。

ペテン師霊能力者みたいな奴とか何見せられても「そんなんインチキだよ!」と指摘する冷笑系おじさんとか自称悪魔憑きとか胡散臭い本出版してる奴らとかが見せ物披露したり言い合いしてるいかにもなオカルト番組を一本丸々流しつつそこにマジモンの悪魔が登場したら?をやっただけの映画ではあるのだけれどこの手の心霊・オカルト系番組を見たことのある人には笑って怖がれる楽しい映像になっているんじゃないかなあと思えるくらいにはそれっぽさと馬鹿らしさがあって最高だった。

普通の番組ならどれだけ出演者が言い合ってもなあなあで済みそうなタイミングでちょっとこれはやばくないですか?な放送事故展開が起こるのでゲラゲラ笑えて大変良い。

死者の声を聞ける胡散臭い男が急にコールタールみたいな吐瀉物を吐き出して凄まじい飛距離を記録したり司会者とゲストの肉体関係をヘラヘラとぶっちゃけている悪魔少女の横っ面に強ビンタが炸裂したりと一個でもデカすぎる放送事故シーンがアホほどいくつも混ぜ込まれていてこんな滅茶苦茶な番組笑わずに見ていられるかよと最高の気分になれましたよ。

この本来なら笑えないような状況なのに観ていると笑える、というこちらが本作を鑑賞していて抱く感覚も恐らく意図的に導かれたものなんだろうなとは思うけど。

映像のチープさもその一助を担っている。
ミミズが腹を割いて出てくるシーンは起きていることのグロテスクさに反して作り物感の強さのおかげでリアリティの無い映像作品を見ているかのような感覚をもたらしていたしプラズマのような光を纏いながら暴れるリリーの姿もあまりにも昔のSF演出すぎて恐怖よりも笑いと困惑の方が勝っていたように感じる。

画質やキャラクターのみならずカメラ越しに起きている惨劇すらもまとめてずーっと70年代レトロな質感がキープされており実際の事件映像であるとするにはどこか現実味が薄い。
つまりはファウンド・フッテージの体をとっていながら実際にはそのジャンルにとって大切な「(あくまでもフィクションではあるが)そこに確かにあったというリアリティ」がチープな画作りによって意図的に排除されているように感じるのだ。

特に終盤のジャックを襲う現実とも幻とも区別のつかない悪夢のような映像の連続なんかジャック目線の出来事すぎてこれがフィルムに残っているのおかしくない?と困惑させられるような、ともすればファウンドフッテージの体をとった作品であれば本来なら見ている人間が冷めてしまってもおかしくない編集も目立つ。

当時の事故映像を流した、というよりかは視聴率に囚われたジャックの人生の顛末を題材に何者かが編集した映像作品のようですらある。

他人を餌に数字をかき集め続けた人間の結末としてはどこか皮肉的で個人的にはかなり好みなラストではあるもののこの辺はファウンド・フッテージものとしては厳しめに評価する人も多い部分かなと。

ただやはり前述の通りこの本来であれば笑えないようなものも笑えてしまうような仕上がりになっていることもいかにもな作り物感満載でファウンドフッテージとするには編集の手が入りすぎている点も全部込み込みで計算づくの作品じゃ無いかなあと思うしいい具合に現実と幻覚の境を行ったり来たりしている誰かの悪夢を見せられているかのような仕上がりは見ていて気持ちよかったのでやはり個人的には好き。

カメラが捉えたのがジャックの人生ならこの映像は誰に向けられたものか、それは我々観客である。
そりゃ映画なんだからそうだろって話なわけだが。

本作で個人的に最も不気味で印象的だったのはずっとカメラに向かって微笑み続けるリリーの場面だ。
まるで画面の向こう側にいる我々観客をしっかりと認識し、目を合わせに来ているかのような不穏な表情は基本笑いながら見ていた本作の中で唯一恐怖を感じた瞬間である。

番組オーディエンス以上に遠い場所で他人事として、また娯楽としてこのホラーを享受している観客にこの作品を観ているお前も当事者だよ」と投げかけるような不穏な視線。

他にもカーマインと同じ手法で画面越しに催眠術をかけているシーンも明らかにこちらを巻き込もうとしていたりとこの映像を作った誰かは明らかにこちらを認識し当事者として巻き込もうとしてきている。

カーマインが催眠術を視聴者ごと巻き込んでかける場面も同様。
そこで起こったグロテスクな展開が催眠による幻覚だったのかそれとも実際に起こったことだったのか我々観客が目にしたアレは催眠術による効果なのか否か?とこちらを大いに混乱させにくるのも明らかに巻き込みにきていると言っていい。

この映画の怖さはここではないかなと。

他人事のように娯楽を享受している観客でしかないこちらを巻き込んでこようとする「見えざる手と悪意」、これがチラつくことが本作最大の恐怖じゃないかなと個人的には感じる。

つまりはこの映画を見ようとした我々観客もまた悪魔と契約した当事者でありこの舞台裏やマルチ映像などを駆使した何者かによる編集が加えられた映像は我々に対する契約の報酬なのではないか。

そして当事者たる我々はジャックからすれば観客であり視聴率・数字という形をした悪魔と言える。
この番組の中で起きた惨劇、そして1人の男の人生の顛末、これを娯楽として享受しようとする我々観客はジャックからすれば悪魔そのものに見えていることだろう。

一体誰が悪魔と契約し、どんな報酬を得て対価を支払ったのか。

第四の壁を超えた演出でこちら側も巻き込み問いかけてくるような体験型ホラーとしては中々に楽しく、嫌な後味もそう悪いものじゃなく感じられる不可思議な映像体験を味わえて大変に美味な映画でした。

サンキュー悪魔!!

良いもん見せてもらったよ!

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あんたい

アニメ、漫画など創作物が好きです。
好きなものや観たものなどについての感情や感想を記録していく場にしたいと思ってます。
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